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ネパールの道を行くということ

9月16日付の現地メディアのニュースに、救急車と自転車の衝突事故を伝えるものがあった。現場は、ネパール最西部に位置するカンチャンプル郡だ。記事によると、カイラリ郡のアッタリヤからカンチャンプル郡のマヘンドラナガルへと向かう道中、東西ハイウェイ上でのことだったという。この道は筆者も通ったことがあるが、ネパール南部の平野部を東西に貫く一本道の幹線道路であり、見通しの悪い場所は基本的には存在しないと言っていい。それでも、こういった事故が起きてしまうのである。

始めに一言断っておきたいが、ネパールの「ハイウェイ」は、日本の高速道路とは大きく異なる。塀で囲まれて一般道と区別されているわけでもなく、走るのは自動車だけではない。今回の事故は自動車と自転車が絡むものだったが、それだけでなく、バイク、電動三輪車(リクシャ)、トラクター、歩行者、ひいては牛車やヤギなどの家畜の群れも行き交う道路である。国立公園内を通るときには、ゾウやクジャク、サルなどといった野生動物に遭遇することもある。ハイウェイ上の制限速度は最高60km/hのようだが、それ以下に制限されている区間も少なくない。

こう書くと、「ネパールの道=未舗装の凸凹道」というイメージが湧きそうだが、それは全体の状況と調和しない。実際にそういった道も存在するが、未舗装の道を普段の生活で利用しなければいけない人は、全体の人口からすれば少数である。特に車が走る道は、むしろ舗装されていることが多い。とはいえ、だ。日本ではなかなか目にすることのない光景や、まさにネパールならでは、と言える状況も眼前に広がる。それも、感覚としては、なかなか高い確率で。

日本とは大きく異なるネパールの道路事情。いつかは特集を組みたいと思っていた。ハイウェイに限定せず、筆者がこれまでに遭遇した様々な場面を写真付きで紹介する。事故についての書き出しとなったが、暗い話題に終始する記事ではないので、お楽しみいただきたい。

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ネパールで事故現場を通りかかった

ネパールの道路事情。横転した車。

まずは、カトマンズから東タライ地域へとつながる山間部を通るハイウェイ上。2021年1月3日。乗客を乗せていたと思われる車両が横転していた。上の荷台に載せていたと思われる荷物はすでにすべてほどいてあった。不思議なのは、衝突したとおぼしき他の車両が周囲にないことだった。

ネパールの道路事情。なぜかこういう事故が起こる。

完全に車両裏側がむき出しになっていた。この時、筆者はこの事故を取材しに来たわけではなく、公共交通機関を利用しての移動中だったために詳細を聞くことはできなかったが、近くに介抱されている怪我人の姿は見受けられなかった。全員無事だったのだろうか。

もう一つの事故現場

しかし、記者はこの数日前、2020年12月30日に平野部のハイウェイにてこれ以上に迫力のある場面に遭遇していた。

ネパールの道路事情。なぜかこういう事故が起こる。

大型のタンクローリーが横転していたのである。幸いにも、この時点で何か危険な物が流出しているというような雰囲気はなく、男性たちが対処していた。

ネパールの道路事情。平坦な道でなぜかこういう事故が起こる。

前方からの写真。この事故の原因は不明だが、ネパールでは無理な追い越しを仕掛けるドライバーも多い。自分が運転する際には十分以上に気をつけたいものだ。

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ネパールで市中の道を行くと

もちろん、道はハイウェイだけではない。市中の道路でもネパールらしい光景が広がる。

ネパールの道路事情。突然壊れる車両1。

ネパール中部、カスキ郡ポカラ市ラム・バザールの一画。トラックが交差点をふさぐようにして止まっていた。事故が起きたかと近づいてみると…

ネパールの道路事情。突然壊れる車両を手で押す。

なんと、事故ではなく故障。いつか友人が「故障して動かなくなったバイクほど邪魔な荷物はない」と言っていたが、これはその比ではなさそうだ。男性たちが手で押して移動を試みている。

ネパールの道路事情。突然壊れた車を手で押す2。

通行人も加勢し、ようやくかすかに動き始めた。こういう場面で悲壮感・緊張感が漂わないのが、ネパールだ。
撮影日は2020年11月18日。

観光地タメルの道をコロナ禍に歩いてみた

観光業が盛んなネパールで、カトマンズ市のタメル地区はとりわけ有名な観光スポットだ。安宿や土産屋が並び、コロナ前は国内外からの観光客でとても賑わっていた場所である。コロナ禍が襲った後、様子はどうなのか。記者は最初の4か月に渡る全土ロックダウンが明けて間もない2020年8月9日に訪れてみた。ロックダウンとそれに伴う国際線フライト停止措置よりも前に入国していた外国人観光客も、この頃までには、そのほとんどが臨時チャーター便等ですでに帰国を済ませていたと思われる。

ネパールの道路事情。ロックダウン開け直後のタメルの風景

これはタメルの入り口。この日の天気も影響しているはずだが、それにしても閑散としている。

ネパールの道路事情。ロックダウン開け直後のタメルの風景2

タメルのど真ん中。SHOP RIGHT MART前もこのとおり。降りしきる雨と客を待ち続ける人力車の存在が、一層の寂しさを感じさせる。

ネパールの道路事情。ロックダウン開け直後のタメルの風景1

シャッターを下ろしたままの店舗も多い。

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街に溶け込む別のもの

さて、もう一度地方に行ってみよう。ネパールの道で目にする日常の風景は、日本にはなかなかないものだ。

ネパールの道路事情。市街地に入ると急に狭い。

まずはネパール東部の交通の要衝、スンサリ郡イタハリ市。ネパールでは多くの場合、人口の多い都市部に入ると突然、通行できるスペースが急激に狭くなる。2020年12月30日撮影。

ネパールの道路事情。ヤギが道の端から顔を出す。

対照的な、ネパール東部の街、シラハ郡ラハン市にて。撮影日は2021年5月3日。道路の端で遠慮がちに過ごしているのは、ヤギだ。放牧されている様子だ。後ろに農作業用トラクターが通りかかり、その向こうには歩行者の足も見えている。日常の光景だ。

ネパールの道路事情。特殊な自転車二人乗り

これは、ネパール南西端の街、カンチャンプル郡マヘンドラナガルにて10年ほど前に撮影したものだ。この地域で自転車の二人乗りは一般的だが、これはなかなか難易度が高そうである。なお、筆者はリキシャに乗車して撮影している。

ネパールの道路事情。牛・車。

ネパール南東部ダヌサ郡ミティラ市ダルケワル。ハイウェイ沿いの商店街だ。現代的な車両と牛にひかせる荷車とが混在している。2021年1月3日撮影。

ネパールの道路事情。堂々と寝そべる犬2

これもポカラ市。道の真ん中に堂々と眠っている犬たちがいるのも、ネパールの日常風景だ。野犬だが、昼間は人懐っこくおとなしい性格のものが多い印象だ。2020年7月14日撮影。

カトマンズ市内の道もご紹介しておきたい

市内を語るには、首都カトマンズは絶対に外せない。先ほどもロックダウン開け間もないタメル地区の様子をご覧いただいたが、カトマンズ内の道で見られる日常の光景をさらにいくつか紹介したいと思う。

ネパールの道路事情。建設現場前の土砂

これは、建設中の建物の前。道路に建築資材が溢れている。これもタメルにて撮影された写真だが、ネパールの建設現場付近ではどこであっても、これが基本の風景である。撮影日は2020年2月12日。

ネパールの道路事情。カトマンズ市内の電線

カトマンズの電柱。もはや柱部分が見えなくなっている。ありとあらゆる電線やケーブルが設置されているが、現地メディアの最近の報道によれば、こういった電柱の使用料を巡ってインターネットプロバイダーと所有者の間で争いが生じているとのことだ。写真は、カトマンズ市ソーラクッテにて、2020年2月12日撮影。

ネパールの道路事情。止まったままの信号

これは、カトマンズ盆地の主要交差点の一つ、コテシュウォル。早朝のためまだ交通量は少ない。2021年1月7日撮影。

ネパールの道路事情。交通整理にあたる警察官

同日同交差点にて、業務にあたる警警官たち。ネパールでは信号機が点灯していたとしても、その下には警官がほぼ必ず配置されている。また、バス停留所となっている場所でも、客待ちの車両で大渋滞となってしまわないようにと、警官がスムーズな運行を促していることがほとんどだ。

ネパールの道路事情。雨期のぬかるみ

すべての道がこうなるわけではないが、雨期は首都も大変である。これは2019年7月15日に撮影したチャービル交差点付近の道。整備途中だった道路が大変ぬかるんでいた。

ネパールの道路事情。堂々と寝そべる犬3

カトマンズでも、やはり道で堂々と眠っている犬に出くわす。これはカトマンズの主要交差点のひとつカランキ。道路の真ん中ではなく歩道に沿って眠っているのは、彼(彼女?)なりの遠慮なのだろうか。2021年1月6日撮影。

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ハイウェイを行ってみる

陸路でカトマンズ外に出ていくには、ほとんどの場合で幹線道路を通る。「ハイウェイ」である。ここでカトマンズを出て、もう一度ハイウェイを行ってみたい。これまた独特の光景に驚かれるだろう。

ネパールの道路事情。ハイウェイ左は山肌。

横に絶壁を望みながら進む。雨期には毎年、この道の複数箇所で土砂崩れが発生する。2020年11月22日撮影。

ネパールの道路事情。左右にかつての土砂崩れの跡が見える。

道の両側に、土砂崩れ(落石)の跡と思われる光景が確認できる。2020年11月22日。

ネパールの道路事情。ハイウェイ沿いで休むバイクライダー。

ハイウェイでバイクを止めて休憩する男性の姿。立っている場所の向こうは崖である。危険だ。バイクの進行方向もおかしいが、対向車がない時に右に寄せて止まったのだろう。眺めの良い場所で休憩したい、ということなのだろうか。それでも、ネパールでは、この光景に誰も驚かないだろう。2020年11月22日撮影。

ネパールの道路事情。山間部のヘアピンカーブ

これはシンドゥリ郡を経由してカトマンズへ通じるハイウェイ。山を登っていくため、急激なヘアピンカーブが続く。2021年1月7日撮影。

ネパールの道路事情。制限時速は20km/h。

ヘアピン手前、制限速度は20km/h。すべてのドライバーが守っていれば、事故は大幅に減るに違いない。

ネパールの道路事情。長距離の移動も自転車でなんのその

これは、東西ハイウェイの一部でもある、コシ橋。どんなに長い距離も、地元の人にとっては、自転車でなんのその。女性が後ろの荷台に座る場合、この写真のように横向きにするスタイルが一般的である。2020年12月30日撮影。

ネパールの道路事情。牛の群れが道をふさぐ

10年ほど前、ネパール西部にて遭遇した牛の群れ。このような牛の群れがハイウェイの道幅いっぱいに広がっているということも、今でもそう珍しくはない光景だ。

ネパールの道路事情。このバスはなんでこんなことに1

カトマンズーポカラ間を結ぶプリットゥヴィ・ハイウェイのポカラ側終点近くの道路沿い。バスのほぼ中央に電線が垂れ下がっている。ネパールの道では、上部にも注意する必要がある。2020年2月21日撮影。

ネパールの道路事情。このバスはなんでこんなことに2

後ろから見るとよりはっきりしている。後日、再度現場を訪れると、この車はなくなっていた。

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IIJmio(みおふぉん)

未舗装の道も行ってみる

前述のとおり、人口のうち多くは舗装された道を利用できる状況にあるが、山間部では未舗装の道を利用している人も多い。ネパール西部に位置するカルナリ州ダイレク郡にも、そのような道がある。

雨天の中の夜間の通行となり、ナイトモードでの撮影となってしまった点をご容赦いただきたい。

ネパールの道路事情。山間部のぬかるんだ道

雨でぬかるみ、沼となった道を行く。左側は崖である。手前に移っている白い部分は車のボンネット。2019年1月25日撮影。

ネパールの道路事情。前方には落石が。

しばらく行くと、落石に道をふさがれていた。運転手はすぐに電話で状況を伝え、ショベルカーを呼んだ。夜間であっても数十分後にショベルカーが到着し、岩を処分して通行できるようにしてくれた。忘れがたい光景であった。

こういった道を行った、その先に

日本とは全然違う道路事情。しかし、こういった道を行ったその先に、突如として何とも言えない美しい光景が広がることがある。

ネパールの道路事情。時折こういう絶景が4。

カトマンズからシンドゥリ方面へ向かうハイウェイの途中。向こうにはヒマラヤ山脈が見える。2021年1月7日。

ネパールの道路事情。崖っぷちの喫茶店。

崖っぷちのところに、こういった軽食屋が営まれていることが多い、ネパールの道。眺望は最高だ。

ネパールの道路事情。時折こういう絶景が。

途中の畑と川のコントラストもまた美しい。

ネパールの道路事情。時折こういう絶景が3。

田園風景が広がる。

ネパールの道路事情。時折こういう絶景が5。

ネパール東部を流れる大河川コシ。雨期には増水や氾濫が懸念されるが、乾期にはこのような美しい姿を見せる。2020年12月30日撮影。

ネパールの道路事情。未舗装の道路の先には

ネパール南西端カンチャンプル郡にて。隣接するカイラリ郡ダンガリ市に通じるインド国境近くの道。両側は広大な畑となっており、サトウキビと菜の花が茂っていた。2018年12月18日撮影。

ネパールの道路事情。イラムの茶畑

ネパール東部イラム郡の茶畑。2021年4月11日撮影。

ネパールの道路事情。時折こういう絶景が7

ネパール西部カルナリ州にある、ダイレク郡にて。こういうつり橋も、ネパールの道である。2019年1月29日撮影。

ネパールの道路事情。時折こういう出会いが

同日、同場所にて。こちらの気持ちも穏やかになる。

さて、本記事も、事故についての話題に始まったが、穏やかな光景に行きついた。ネパールの道の先にはいつも、筆者にとって忘れられない素敵な出会いが待っているのである。

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