
6月11日にモンスーンが到来して雨期が始まったネパールで、今年は早くも被害が発生している。約半月の間にすでに26の郡が水害にみまわれ、あるいはその危険にさらされている。とりわけ、6月17日には、首都カトマンズの北東に位置するシンドゥパルチョーク郡のメラムチ市等では大規模な災害が発生した。現地メディアは、河川の氾濫に伴って運ばれた大量の泥が建物の3階部分まで埋め尽くしてしまったと伝えている。
昨年も雨期に多くの土砂災害に見舞われたネパールだが、今年も例年以上の雨量となることが予想されており、9月末から10月初め頃まで今後も危機が続くと思われる。ネパール政府の「災害危機ポータル」が発表しているデータ※1に基づき、ここまでの被害状況をまとめた。
※1 現地時間6月27日午前7時現在まで
河川氾濫(洪水)が14郡で発生 17人が死亡、25人不明、7人怪我
シンドゥパルチョーク郡で337家屋全壊、5人死亡、20人行方不明
最もひどい被害に見舞われたのは、シンドゥパルチョーク郡。河川氾濫により5人が命を落とし、6人が怪我、20人が行方不明となっている。さらに337軒の家屋が全壊したと報告されている。7つのコンクリート製の橋、13のつり橋が流され、10箇所の魚の養殖場が破壊された。さらに交番を含め合計18の政府系施設が全壊したという。被災した525人が避難中で、632軒の家屋が危険な状況にあるという。
マナン郡では学校も被災
やはり山間部にあるマナン郡では、人的被害はないものの、洪水により59軒の家屋が全壊、20軒が一部損壊したという。(ネパールでは、「半壊」と「一部損壊」の区別はなされていない。)チャメ村にある学校は、すでに3部屋分がマルシャンディ川に流されており、川岸の浸食が続いているという。
ラムジュン郡では100軒近い家屋に被害
カトマンズ郡から西側にあるラムジュン郡でも、洪水により18家屋が全壊、77家屋が一部損壊した。
カスキ郡ではポカラ市で洪水被害
ラムジュン郡からさらに西に行ったカスキ郡でも洪水被害が生じている。カスキ郡にはネパール国内髄一の観光地であるポカラ市があり、本来外国人も多く住む地域だ。被害はここで発生している。場所の詳細は、ポカラ市第11地区のアンナプールナ村とマディ村そしてルパ村だ。合計37家族が被災したという。1人が死亡し、1人が怪我を負っている。建物の被害としては14軒の家屋が全壊し、2軒が一部損壊した他、2つの学校と道路1本も被害に合っている。
ダン郡でも1人死亡、1人行方不明
ダン郡では、ラマヒ市在住の30歳の男性が畑仕事を終えて帰宅途中に川に流され、治療途中に亡くなったという。さらに、ゴラヒ市でも50代女性が帰宅途中にバガレ川を渡ろうとしたところ、流されて行方不明となっていると報告されている。
この他、洪水被害に遭っているのは、バジュラ郡、ゴルカ郡、ピュータン郡、アルガカーチ郡、カブレパランチョーク郡、サプタリ郡、ドラカ郡、ドティ郡、サンクワサバ郡である。
ムスタンやダイレク、チトワンなど9郡では土砂崩れ
昨年とりわけ多かった土砂崩れによる被害も今シーズンすでに9郡で発生している。ドティ郡では3人が死亡し、3人が怪我をしている。カリコート郡では1人死亡、行方不明1人。行方不明者は34歳で、捜索が続いているという。ムスタン郡では1軒の家屋が全壊、バジャン郡では1人死亡、チトワン郡でも1人が怪我を負っている他、フムラ郡では家屋4軒が全壊、5軒が一部損壊している。ダイレク郡では人的被害は出ていないものの、250人ほどが親戚等の家に身を寄せているという。
この他、パーツタル郡では、水路の工事中に岩を含む土砂崩れがあり、58歳の男性の頭を直撃、その場で命を落とした。同時に他の1人も怪我を負ったものの、すでに退院しているという。ロルパ郡では、1軒の家屋を土砂崩れが襲い、家にいた3人の遺体が発見された。他の3人は怪我を負ったものの、すでに退院している。
この他、ヒマラヤ山脈に位置するジュムラ郡では雪崩により1人が死亡、2人が怪我を負っている。さらに、ヒマ村では各所で土砂崩れが発生して16家族の117人が親類の家に避難しているという。パルパ郡では、降り続く雨によって1人が死亡、ルーパンデヒ郡では、ティナウ川にかかるつり橋から転落した1人が流されて行方不明となっており、捜索が続いているという。
ネパール気象庁は警戒を呼び掛け
ネパールの気象庁は、3日間予報を12時間ごとに更新しているが、6月27日午前6時時点で、今後24時間の間に第1州、バグマティ州、ルンビニ州の1,2か所で雷雨となる可能性があり、それらの州の山間部では土砂崩れや土石流、河川増水の危険、交通への影響がありうるとして警戒を呼び掛けている。