隣国インドと共に、新型コロナウイルス感染拡大の深刻な第二波に見舞われているネパールで、5月10日、陽性の検査結果が出る割合が検査全体の50%を上回った。これには抗原検査の結果も含まれており、PCR検査の結果だけに絞れば、陽性率は51.7%となる。これはネパール全体での数値だが、局地的にはもっと高い地域も存在する。翌11日の新規感染者数は9,483人で、これまでの最多を更新した。
ビルガンジ78%、ジャパ81%、ネパールガンジ83%の衝撃
例えば、5月10日に発表された数字によれば、パルサ郡ビルガンジ市にある検査施設では191件の検査が行われ、149の陽性結果が確認された。陽性率は78%に及んでいる。首都カトマンズから南方約140kmに位置するビルガンジ市はインドと国境を接している街で、東西のほぼ中央に位置する、主だった出入国ポイントの一つだ。
ネパール南西部のインドとの出入国地点であるネパールガンジ市の状況はさらに深刻だ。第二波の最初期から医療崩壊が起こり、最も早くロックダウンに踏みきったこの街でも、陽性率の異常な高止まりが続いている。ベリー病院でこの日に行われた検査数は421件で、そのうち353が陽性とされた。その率は83.8%である。
極西州南部の状況も同様だ。カンチャンプル郡ビムダッタ市(マヘンドラナガル)の病院では479件中376(陽性率78.4%)、カイラリ郡ダンガリ市では554件中328(59.2%)の陽性結果となっている。
ジャパ郡はネパール東南端にある郡だ。ここのメチ病院でのこの日の検査結果は、134件中109件が陽性となり、81.3%の陽性率となっている。
これらはいずれも南部の平野部に位置する郡だが、以下の画像から、南部平野とネパール中央部に感染が広がっている様子が見て取れる。

首都カトマンズでは現在感染者3万人以上
第一波に続き感染拡大のホットスポットとなっている首都カトマンズでは、5月12日の時点で、現在感染者が3万558人に達している。毎日3,000人近い新規感染者が確認されており、収束の兆しは見えていない。首都圏を構成する他の2郡の数字と併せると、現在感染者数は4万1,888人に達している。
ロックダウンは73の郡に 首都圏3郡も5月27日まで延長
急激な感染拡大を受けて、ネパールの77ある郡のうちロックダウンを行う郡は、5月12日午後7時までの時点で73に達した。残っているのは、西から順にマナン郡、東ルクム郡、コタン郡、そしてテーラトゥム郡だけとなった。これらの郡の現在感染者数は、5月11日までの政府統計で、それぞれ、11、29、62、53人となっている。
首都圏3郡では、4月29日からロックダウンが続いている。これまでに期限は2度延長され、最新の期限は5月27日までとなっている。規制内容も期限延長の際に調整されている。これまでは事前許可制となっていたパーティ会場での結婚式が全面的に禁止された上で、自宅での結婚式も出席者を10人までに制限することが求められるなど、一部厳格化されている[mfn]これまでは、15人までとされていた。[/mfn]。一方、食品店は午前10時までの営業が認められ、これまでに比べて1時間延ばされている。
スンサリ郡イタハリ市は食料品店の営業も全日禁止
首都圏以上に厳しい措置に踏みきったのは、東部のスンサリ郡イタハリ市だ。スンサリ郡自体4月30日から5月14日の期間中郡全域をロックダウンしているが、同市はさらに独自の施策として、5月12日午前10時から5月18日深夜24時までの期間、病院と薬局を除いてすべての企業・店舗の営業を禁止した。これには、日用品・食料品店の営業禁止も含まれている。例外として営業が認められるのは、青果店と牛乳販売店のみで、これらの営業も午前10時までという規制がかけられている。市の告知によれば、「5月9日までの時点で市内で587人が感染している」。
スンサリ郡全体では1,308人の現在感染者数となっている。
5月11日午後7時までの時点でロックダウンの開始・延長を決定した郡は以下のとおり。
(表を飛ばして、記事の続き「国際線フライト停止期間も延長-5月31日まで」を読む。)
開始日付※1 | 郡 | 対象地域 | 当初の期限 | 延長後の期限※2 | 現在感染者数※3 |
4月20日(火) | バンケ郡 | ネパールガンジ市 | 4月28日(水) | - | 5,254 |
4月26日(月) | バンケ郡※4 | 全域 |
5月10日(月)24時 |
5月17日(月) | ※5 |
4月27日(火) | スルケット郡 | 全域 | 5月4日(火)24時 | 5月14日(金)24時 | 2,244 |
4月28日(水) | カスキ郡 | 全域 | 5月4日(火)24時 | 5月14日(金)24時 | 3,787 |
4月29日(木) | カトマンズ郡 | 全域 | 5月5日(水)24時 | 5月27日(木)24時 | 30,558 |
ラリトプル郡 | 全域 | 5月5日(水)24時 | 5月27日(木)24時 | 6,716 | |
バクタプル郡 | 全域 | 5月5日(水)24時 | 5月27日(木)24時 | 4,614 | |
カイラリ郡 | 全域 | 5月5日(水)24時 | 5月20日(木)24時 | 2,660 | |
パルサ郡 | 全域 | 5月5日(水)24時 | 5月14日(金)24時 | 1,516 | |
カンチャンプル郡 | 全域 | 5月5日(水)24時 | 5月21日(金)24時 | 908 | |
チトワン郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 2,650 | ||
ルーパンデヒ郡 | 全域 | 5月13日(木)6時 | 5月27日(木) | 8,173 | |
ダルチュラ郡 | マルマ村など | 次の発表があるまで | 137 | ||
4月30日(金) | ダン郡 | 全域 | 5月8日(土)18時 | 5月15日(土)24時 | 3,159 |
パルパ郡 | 全域 | 5月7日(金)24時 | 5月18日(火)24時 | 1,108 | |
バグルン郡 | バグルン市内の一部など | 5月7日(金)24時 | 174 | ||
スンサリ郡 | 全域 | 5月7日(金)24時 | 5月29日(土)24時 | 1,398 | |
5月1日(土) | モラン郡 | ビラトナガル市など一部 | 5月7日(金)24時 | 3,492 | |
グルミー郡 | 全域 | 5月7日(金)24時 | 5月18日(火)24時 | 287 | |
ピュータン郡 | 全域 | 5月7日(金)24時 | 5月14日(金)24時 | 142 | |
ゴルカ郡 | 全域 | 5月7日(金)24時 | 624 | ||
ジャージャルコート郡 | 全域 | 5月8日(土)24時 | 5月15日(土)24時 | 347 | |
5月2日(日) | バジュラ郡 | ヒマリ村 | 5月14日(金) | 16 | |
サリャン郡 | 全域 | 5月15日(土)24時 | 192 | ||
西ルクム郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 128 | ||
ダレンドゥラ郡 | 全域 | 5月8日(土)24時 | 5月18日(火)24時 | 404 | |
ウダイェプル郡 | 全域 | 5月8日(土)20時 | 5月14日(金)24時 | 177 | |
ジャパ郡 | 全域 | 5月9日(日)24時 | 5月14日(金)24時 | 2,169 | |
カブレパランチョーク郡 | 全域 | 5月8日(土)24時 | 5月16日(日) | 1,314 | |
マクワンプル郡 | ヘトウダ市など一部 | 5月15日(土)24時 | 1,482 | ||
カリコート郡 | 全域 | 5月9日(日)24時 | 91 | ||
ダルチュラ郡 | マハカリ市 | 5月8日(土)24時 | ※5 | ||
アチャム郡 | 全域 | 5月16日(日)24時 | 521 | ||
5月3日(月) | バルディア郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 808 | |
バジャン郡 |
全域 |
5月9日(日)24時 | 5月16日(日)24時 | 29 | |
シャンジャ郡 | ワリン市など一部 | 5月14日(金)24時 | 5月29日(土) | 421 | |
ラメチャープ郡 | マンタリ市など一部 | 5月10日(月)24時 | 5月17日(月) | 297 | |
タプレジュン郡 | タプレジュンファンリン市の一部など | 5月10日(月)24時 | 5月17日(月) | 127 | |
アルガカーチ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 497 | ||
バイタリ郡 | 全域 | 5月16日(月)24時 | 775 | ||
5月4日(火) | カピルバストゥ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 5月24日(月) | 776 |
シャンジャ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | ※5 | ||
ヌワコート郡 | 全域 | 5月10日(月)24時 | 5月17日(月) | 787 | |
ダヌサ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 1,647 | ||
ダイレク郡 | 全域 | 5月11日(火)24時 | 5月18日(火) | 347 | |
バグルン郡 | バグルン市 | 5月14日(金)6時 | ※5 | ||
ドルパ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 13 | ||
ドティ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 330 | ||
東ナワルパラシ郡 | 全域 | 5月18日(火)24時 | 563 | ||
西ナワルパラシ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 863 | ||
フムラ郡 | 全域 | 5月12日(火) | 5月18日(火) | 18 | |
ダディン郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 837 | ||
5月5日(水) | ゴルカ郡※4 | 全域 | 5月14日(金)24時 | ※5 | |
バジュラ郡※4 | 全域 | 5月14日(金)24時 | ※5 | ||
マホッタリ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 693 | ||
ロルパ郡 | 全域 | 5月19日(水)24時 | 142 | ||
ムグ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 11 | ||
ドラカ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 202 | ||
ダンクタ郡 | ダンクタ市 | 5月14日(金) | 106 | ||
ジュムラ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 132 | ||
シンドゥリ郡 | 全域 | 5月12日(水)24時 | 474 | ||
5月6日(木) | バラ郡 | 全域 | 次の発表があるまで | 508 | |
シラハ郡 | 全域 | 次の発表があるまで | 342 | ||
シンドゥパルチョーク郡 | 通り毎に指定 | 5月14日(金)24時 | 465 | ||
5月7日(金) | バグルン郡※4 | 全域 | 5月14日(金)24時 | ※5 | |
モラン郡※4 | 全域 | 5月15日(土)24時 | ※5 | ||
ロウタハット郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 536 | ||
5月8日(土) | サルラヒ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 309 | |
サプタリ郡 | ラズビラージ市等 | 次の発表があるまで | 247 | ||
5月9日(日) |
ダルチュラ郡※4 | 全域 | 5月14日(金)24時 | ※5 | |
カリコート郡※4 | 全域 | 5月16日(日)24時 | ※5 | ||
サンクワサバ郡 | 全域 | 5月16日(日) | 121 | ||
オカルドゥンガ郡 | 全域 | 5月23日(日)24時 | 93 | ||
ソールクンブ郡 | 全域 | 5月23日(日)24時 | 66 | ||
5月10日(月) |
タナフ郡 | 全域 | 5月14日(金)24時 | 445 | |
ラスワ郡 | 全域 | 5月17日(月)24時 | 195 | ||
パーツタル郡 | 全域 | 5月17日(月)24時 | 36 | ||
5月11日(火) |
パルバット郡 | 全域 |
5月21日(金)24時 |
237 | |
イラム郡 | 全域 |
5月26日(水)24時 |
97 | ||
ラムジュン郡 | 全域 |
5月17日(月)24時 |
230 | ||
5月12日(水) |
ボズプル郡 | 全域 | 5月26日(水)24時 | 69 | |
5月13日(木) |
ムスタン郡 | タサンなど一部 | 5月20日(木)24時 | 61 |
※1 24時に開始されることも多く、その場合はネパール内務省の記載方法のまま、翌日午前0時ではなく、当日24時として扱っています。※2 複数回延長された場合は、最新の期限のみを記載しています。※3 郡全域での現在感染者数。数字は記事執筆時点のもの。※4 同郡のロックダウンは一部地域ですでに始まっていましたが、この日から対象地域が全域に拡大されました。 ※5 同郡にて最初にロックダウンが始まった日付の欄に記載しています。
国際線フライトの停止期間も延長ー5月31日まで
さらに、感染予防策の一環として行われている国際線フライトを停止措置の期間が延長されることとなった。当初は5月14日までの期間が予定されていたが、5月31日午後23時59分が新たな期限に設定された。ネパール民間航空局が告知している。
なお、エア・バブル協定に基づき、国際線フライト停止期間中も例外として運行が認められているカトマンズーニューデリー間のフライトは、引き続き週2便の運航(ネパール航空とエア・インディアによるものが1便ずつ)が認められている。
航空会社に対しては、次の情報が出されるまで予約を開始しないよう、また、乗客の求めに応じて搭乗日の延期やチケット代の払い戻し対応を促進してゆくよう告げられている。

日本、インド・ネパール・パキスタンからの再入国拒否へ
すでに英国はネパール滞在歴のある外国人の入国を禁止する等の措置を取ったとネパール国内でも報道されている。日本でもネパールからの渡航者に対する水際対策が強化されており、5月12日、日本はネパールを「変異株流行国・地域」に指定した。これに伴い、5月14日午前0時より、日本への上陸申請日14日以内にインド、ネパール、パキスタンに滞在していた外国人の再入国が原則として拒否されることとなった。特別永住者は今回の措置の対象ではない。また、永住者や日本人の配偶者等、永住者の配偶者、そして定住者としての在留資格保持者は、原則として入国が認められるとされている。
当マガジンは引き続き、ネパールの新型コロナウイルス感染拡大と関係する状況の変化を注視していく。
(※6月2日、見出しを修正しました。)