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陽性率43%のネパールでロックダウンドミノ 一日の新規感染者数は7000人超え 国内線・国際線フライトも停止へ

記事公開日: 2021年5月4日
コロナ禍でロックダウン中のネパールの資料写真
(昨年の2度目のロックダウン中、シャッターを閉ざしている店舗。2020年8月23日17時32分=カトマンズ郡トカ市にて撮影。)

まるでドミノ倒しのようだ。新型コロナウイルスの急激な感染拡大が起きているネパールで、各地方政府(郡政府)が続々とロックダウン(都市封鎖)へと踏み出している。ロックダウン開始の基準となるのは、現在感染者数で、カトマンズ盆地内と、タライ地方(ネパール南部に広がる平野部)に属する郡では500人、山間部とヒマラヤ山脈に属する郡では200人である。ロックダウンを施行する権限は各郡知事に与えられている。ネパール内務省の資料によれば、5月3日午前8時までの時点で、郡全域あるいは特定の地域を対象にしたロックダウンに踏み切った郡は、ネパールの全77郡中41郡に達している。

※現在感染者:英語では「Active cases」。ネパール語では字義的には「活発感染者」という言葉が使われているが、当マガジンは「現在感染者」と訳している。これは、現時点で快復に至っておらず感染が継続している者として保健人口省に把握されている人のことである。

西に始まり、カトマンズ、そして全国へ

最初にロックダウンに踏み出したのは、ネパール西部、タライ地方に属するバンケ郡だ。同群の主要都市ネパールガンジ市は感染拡大と医療崩壊が起きている様子が報道されている。4月26日(月)から郡全体を対象にしたロックダウンを決定した。この日までに郡内の現在感染者数は2,588に達しており、翌日には423人増えて3,011人に達した。当初、ロックダウンの期間は1週間とされていたが、すでに5月10日深夜24時まで延長されることが決まっている。

これに、バンケ郡の北西ほど近くに位置するスルケット郡が続いた。4月27日(火)からやはり1週間の予定でロックダウンに踏み切った。その時点での現在感染者は440人であったが、翌28日(水)には562人で、500人を上回った。スルケット郡当局は28,29日両日に取り締まりを行った結果を公表している。それによれば、違犯者1445人を対象に注意勧告を行い、22台の車両を差し押さえ、マスクを着用せずに外出していた人を対象に735枚のマスクを配布し、悪質な違反者192人を対象に合計罰金2万800ルピーを徴収したとしている。

次は、カスキ郡だ。東西南北のちょうど真ん中に位置するこの郡には、ネパール第二の都市ポカラ市がある。4月28日(水)午前6時から1週間のロックダウンとなった。しかし感染拡大は収まらず、5月14日深夜24時までの延長が発表されている。さらに、当局が認めた車両を除いて他の車両の通行が全面的に禁止されるなど、ロックダウンの内容が強化された形となっている。カスキ郡の現在感染者数は、4月28日以降5月2日までの5日間で、245人増加して1159人に達した。

そして、4月29日(木)午前6時を迎えた。首都圏を構成するカトマンズ盆地3郡(カトマンズ、ラリトプル、バクタプル)合同のロックダウンがスタートした。もっとも深刻な感染状況にあるのはカトマンズ郡だ。ロックダウン開始以降の4日間で発表された新規感染者数は8,207人に達しており、5月2日時点で現在感染者は1万6,717人に上っている。これにラリトプル郡とバクタプル郡を合わせると、現在感染者数は2万2,000人に迫る。カトマンズ郡及び内務省の資料では、5月5日深夜24時の期限が延長されることは掲載されていないが、現地報道では、内閣がすでにカトマンズ盆地内のロックダウンをさらに1週間延長することが閣議決定したと伝えられている。

20万人規模で首都圏脱出、その後各地でロックダウン

カトマンズ盆地がロックダウンーこの知らせは地方出身の学生や出稼ぎ労働者を波のように地元へ向かわせた。発表されてから施行まで2日半の猶予が与えられた。現地報道で伝えられている当局者の説明によれば、これは、前回のロックダウン時に困窮に耐え兼ねた人々が何百キロも徒歩で地元に帰ろうとしたことを念頭に、首都圏を出る猶予を与えるための措置だという。現地紙ゴルカパットラ(Web版)は、大都市交通警察からの情報として、20万人がカトマンズを後にしたと伝えている。

この後、雪崩をうったかのように各地がロックダウンに舵をきる。同29日にカイラリ郡やチトワン郡等の6郡、30日にダン郡等4郡、5月に入って3日間で27郡である。詳細は以下の表にあるとおりだ。

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開始日付対象地域最初の期限延長後の期限現在感染者数※1
4月29日(木)カイラリ郡全域5月5日(水)24時5月13日(木)24時1,369
パルサ郡全域5月5日(水)24時 1,273
カンチャンプル郡全域5月5日(水)24時 438
チトワン郡全域5月14日(金)24時 1,281
ルーパンデヒ郡全域5月13日(木)6時 4,221
ダルチュラ郡マルマ村など次の発表があるまで 19
4月30日(金)ダン郡全域5月8日(土)18時 1,761
パルパ郡全域5月7日(金)24時 

476

バグルン郡バグルン市内の一部など5月7日(金)24時 187
スンサリ郡全域5月7日(金)24時 554
5月1日(土)モラン郡ビラトナガル市など一部5月7日(金)24時 1,604
グルミー郡全域5月7日(金)24時 186
ピュータン郡全域5月7日(金)24時 84
ゴルカ郡全域5月7日(金)24時 293
ジャージャルコート郡全域5月8日(土)24時 35
5月2日(日)バジュラ郡ヒマリ村5月14日(金) 17
サリャン郡全域5月15日(土)24時 125
西ルクム郡全域5月14日(金)24時 54
ダレンドゥラ郡全域5月8日(土)24時 163
ウダイェプル郡全域5月8日(土)20時 52
ジャパ郡全域5月9日(日)24時 479
カブレパランチョーク郡全域5月8日(土)24時 551
マクワンプル郡全域5月15日(土)24時 537
カリコート郡全域5月9日(日)24時 46
ダルチュラ郡マハカリ市5月8日(土)24時 ※2
5月3日(月)バルディア郡全域5月14日(金)24時 526
バジャン郡

全域

5月9日(日)24時 26
シャンジャ郡ワリン市など一部5月14日(金)24時 167
ラメチャープ郡マンタリ市など一部5月10日(月)24時 123
タプレジュン郡タプレジュンファンリン市の一部など5月10日(月)24時 40
アルガカーチ郡全域5月14日(金)24時 231
バイタリ郡全域5月16日(月)24時 224
5月4日(火)カピルバストゥ郡全域5月14日(金)24時 446
ヌワコート郡全域5月10日(月)24時 292
ダヌサ郡全域5月14日(金)24時 650
ダイレク郡ダイレク市等一部5月11日(火)24時 108
バグルン郡バグルン市5月14日(金)6時 ※2

※1 郡全域での現在感染者数。数字は記事執筆時点のもの。 ※2 先日付の行に記載済み。

感染拡大は国内未知のレベルに ついに一日あたり7000人以上、1か月前の58倍

ネパールでは一時期、一日当たりの新規感染者数が50人台まで下がっていた。3月中旬の事である。今からちょうど2か月前の3月3日の新規感染者数は87人で、3月中は2桁台と100人台を行き来しながら推移していた。今から1か月前の4月3日の新規感染者数も128人だったが、数日前の3月29日には89人の新規感染が報告されていた。しかし、4月5日には200人を超え、その後100人台に戻らなくなる。

保健人口省が「毎日の状況報告」に掲載しているマップがある。そのマップでは、現在感染者数が200人以上の郡が赤色で示されており、郡毎の感染者数が数字で示されている。4月15日のものと5月3日のものを比較すると、ほんの2週間強でネパール中に一気に感染が拡大しているのが見て取れる。

ネパールのコロナ第二波 1,000人超新規感染 14郡が「極度被災地域」


(ネパールの保健人口省がメッセージングアプリViberのグループに2021年4月15日に投稿した画像から。感染拡大第二波が本格化しているネパールでは、この日の新規感染者数が1,000人を超えた。上記の地図では、200人以上の現在感染者がいる6つの郡が赤色、51人以上の現在感染者がいる11の郡が濃い黄色で表されている。500人以上現在感染者がいる郡はカトマンズとバンケ。すべての郡に現在感染者がいることも見て取れる。)
5月3日のネパールの新型コロナウイルス感染状況 第二波
(この画像は保健人口省ホームページからダウンロードできるものの一部。2021年5月3日の感染状況。感染拡大を示す赤色が一気に増えているのが見て取れる。500人以上の現在感染者がいる郡は、モラン、パルサ、カトマンズ、バクタプル、ラリトプル、チトワン、カスキ、ダン、バンケ、ルーパンデヒ、スルケット、そしてカイラリ。その他にも20の郡で200人を超えている。)

第一波で感染拡大のピークを迎えたのは昨年の10月21日で5,743人であった。ところが、今回の第二波では、5月1日に5,763人に達して第一波のピークを超えると、翌2日には7,211人、そして、5月3日には7,448人に達した。あっという間のことであった。あくまで確認された感染者数に基づく計算ではあるが、1か月前に比べて58倍の勢いで感染が広がっているといえる。特に、この2日間は一日当たりの死者数も30人を上回る状況が続いており、懸念される状況だ。

第一波に対して第二波がさらに猛威を振るっていることを示すもう一つの数字がある。陽性率だ。第一波のピークだった10月21日のPCRテストの陽性率は28.5%だった。決して低い数字ではないが、5月3日の43.3%に比べると第一波が穏やかものであったという印象をさえ受けてしまう。

※数字はRT-PCRテストと抗原検査の結果を総合したもの。この日のRT-PCRテストは1万6,658件で陽性は7,388人。陽性率は44.3%だった。抗原検査の件数は518件で60人に陽性結果が出ている(陽性率11.5%)。第一波ピーク時にはRT-PCRテストのみが用いられていた。

国際線フライトも停止 医療は総力戦へ

5月2日、ネパール政府はさらなる規制へ踏み切り、国内線・国際線フライトを停止することが決定された。空路での移動は、カトマンズ盆地内への車両の乗り入れが禁止されて以降も認められていた。国内線フライトは5月3日(月)24時から、国際線フライトは5月6日(木)24時から運行が停止されると、3日に首相談話の中で発表された。ネパールの民間航空局のホームページにも、その日時での停止が告知されている。ただし、停止後も、ネパールーインド間だけは例外で、週2便の運航が認められる。これらの措置の期間は、5月14日(金)までとされている。

医療体制も、総力戦の様相を呈してきた。保健人口省は、研究目的で休暇中の医療関係者と共に、医学生と医学分野の教師に対し、病院での処置にあたるよう要請している。そして、首相談話の中で明らかになったところによると、今後、国内全ての酸素製造業者に対し、病院に対するものなど医療目的以外の場所への供給が禁止されることになった。さらに、州とカトマンズに病床数1,000の仮設コロナ病院を設置するとも発表されている。

インドと陸続きのネパール。ドミノ倒しのようなロックダウンをもたらしている新型コロナウイルスの脅威は、未知の領域に突入したと言えそうだ。

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