3月2日午前11時半ころ、ネパールのポカラで、日本ではまず見ないであろう光景が見られた。トラクターの行く手を一台の自転車が阻んだのだ。しかし、その姿は、私たちの知る自転車の姿ではなかった。
現在、ネパールでは二つの新しい国際空港が建設中だ。そのうちの一つがカスキ群ポカラ市にある。2022年の運用開始を目指しているとのことである。空港だけでなく、その周辺道路も目下工事中である。
工事中とはいえ、ネパールの場合は歩行者は通行止めにはならない。重機が作業するそばを、平気で歩行者が通って行く。バイクや自動車も、可能と見れば通過していく。
これからお昼休憩なのだろう。徒歩で移動中だった記者を、15人から20人はいるであろう建設作業員を荷台に載せたトラクターが追い抜いていく。この光景を写真に収めたい。そう思った瞬間だった。トラクターが急ブレーキをかけ、作業員が二人荷台から飛び降りて前方に走っていく。しかし、雰囲気はなんだか楽しそうだ。
記者も前方に回り込んでみると、理由が分かった。自転車が、立ち上がってトラクターの行く手を阻んでいたのである。

この自転車、荷台に鉄くずをたくさん載せている。この姿勢になってしまった理由は明らかに、過積載である。自転車を荷車の代わりに使う光景はネパールでは日常的だが、さすがにこの光景は珍しい。前方が浮かないように押さえつけながら自転車を押していた手が、荷重に耐えられなくなってしまったのだろう。
トラクターのブレーキが間に合って事なきを得たことを嬉しく思った。