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【ルポ】ネパールのトリブバン空港で入国審査用のシステムがダウン(2月11日)

ネパール・カトマンズの交通渋滞
(イメージ写真/ネパールの首都カトマンズの交通渋滞)

2月11日、ネパールの入国審査にてシステムダウンが生じ、多数の入国希望者が1時間以上列で待たされた。偶然その列の中に居合わせた記者がルポルタージュをお届けする。

コンピューター化とネパールらしさ

驚いた。ネパール唯一の空の玄関口、トリブバン国際空港の入国審査が完全にコンピューターシステム化されたのだ。

2月11日19時過ぎ、記者はトリブバン空港に降り立った。飛行機から降りて、そのまま徒歩で建物内に向かう。建物に入ればすぐに入国審査だ。さすがにこの時期、ネパールの空港には新型コロナウイルス感染についての注意書きが掲示されている。とはいえ、標題のみ英語で本文はすべてネパール語だ。その看板を過ぎると、すぐに入国審査場だ。

日本人を始め多くの外国人は空港にてビザを取得することができる。手順はこうだ。まず、入国審査ブースの窓際に並ぶコンピューター端末で自らの情報を入力する。(写真撮影が禁止されているエリアであるため、写真をお届けできないのが残念である。)控えが印刷されるので、それを持って、併設されている銀行カウンターにてビザ代を支払う。そして、銀行カウンターから返却された控えと領収書、パスポートを持って入国審査官に提出する。問題がなければ、パスポートにビザのシールが貼られ、スタンプが押されて入国を許可される。

何年か前からこの手順となっていたが、最近になっていくつか変更になった点がある。

まず、最初のコンピューター端末への入力だ。記者が去年プライベートで入国した際には、すべての情報を手入力した後、端末に付属しているカメラで顔写真を撮る必要があった。それ以前もそうであった。

ところが、今回はパスポート番号を入力するや否や、パスポート所持者の情報が画面上に一度に表示されたのである。ネパールもここまで来たかと驚きを隠せなかった。

そして、写真撮影は不要になっていた。新たに入国審査官の所にカメラが設置されており、そのカメラで管理するようになったようである。

しかし、ネパールらしさも残っている。そのコンピューター端末にはカメラだけでなく、スキャナーも付いており、以前はパスポートのバーコードを読み取らせる必要があった。しかし、現在は全く機能していない。設置されているキーボードでパスポート番号を手入力する必要がある。そして、今回記者が利用した端末では、プリンターも機能していなかった。プリントボタンを何度押下しても、控えの印刷が始まらない。係員を呼ぶと、端末の画面を自分のスマホカメラで撮影するように、と指示された。「写真撮影厳禁」と表示されているエリア内であるはずなのだが、不思議なものである。端末入力が終了したのは、19時30分であった。

そして、システムダウン。外国人観光客、1時間以上長蛇の列に

ビザ代を支払う銀行カウンターにてスマホを見せると、係員は当たり前のようにスマホを受け取り仕事に取り掛かった。スマホカメラで撮影した端末画面を見せられるのは当たり前のことのようである。

発行された領収書を受け取り、入国審査の列に並んだ。長蛇の列だ。ビザ所持者用の列にほとんど人が並んでいないのを見て、やはり私も事前申請しておくべきだったかと後悔の念がよぎった。

入国審査のカウンターに目をやると、一人一人の審査に時間をかけている様子がうかがえる。列もなかなか進まない。スマホを空港のフリーWi-Fiにつないで暇をつぶそうとするが、どういうわけか接続できない。仕方なく、列に並ぶ人々に思いを馳せる。記者の前に並んでいるのは、ネパール人グループである。ネパール語を話している。彼らも、外国人用の列に並んでいる。彼らは、外国に移住したネパール人、いわばネパール系外国人である。母語は引き続きネパール語で親戚も多くネパールにいるが、彼ら自身は外国籍なのである。その場合、当然ながら外国人用の列に並ぶことになるのだ。

それにしても、列は一向に進まない。現在入国審査中の人たちが全く入国を認めてもらえないようで、困り顔でただカウンターの前に立っている。ビザ所持者用の列に目をやると、入国審査中の外国人の所に警官が2人来てカウンターの何かを覗き込んでいる。しかし、緊張感はない。警官たちは審査中の外国人の方ではなく、カウンターを覗き込んでいる。

記者が列に並び始めてから1時間が経過した。

列が一歩も進まない状況に、これまで辛抱強く列に並んでいた人たちもさすがにざわつき始めた。ネパール人グループの中の年配の男性は疲れ果て、床に座り込んでしまった。通りかかった警備員に、業を煮やした一人のネパール人男性が叫ぶ。

「もっと人手を増やしてよ!」

警備員は答える。

「人は足りてるんですよ」

それに反応したのかどうかは分からないが、直後に男性係員が一人現れ、口頭で説明を始めた。

「今コンピューターシステムがダウンしてしまっていますので、しばらくお待ちください。」

一人一人の審査を厳しくしているとばかり思っていたが、入国審査そのものが中断していたのだから、どうりで列が全く進まないわけである。先ほどの警官二人も、好奇心でカウンターを覗き込んでいただけのようだ。実にネパールらしい光景である。

その後しばらくして、入国審査が再開された。どうやら、パスポートを読み取るスキャナーと顔写真を撮影するカメラに不具合が生じているようである。入国審査官たちは度々首をかしげつつ、何度もケーブルの抜き差しを繰り替えしながら、しかし速やかに入国審査を進めた。先ほど座り込んでしまった年配男性は車椅子に乗せられ、同行者と共に優先的に審査を受けることができていた。

ようやく記者の順番が巡ってきたとき、となりのカウンターに並んだネパール人男性が入国審査官にアドバイスをしているのが聞こえた。こんなことでは外国人観光客に面目が立たないではないか、というような趣旨だったように思う。自らも外国籍でありながら完全にネパール人としての立ち位置で話していた。記者はその光景に「ネパールにやって来た」という実感を強めながら、入国審査を通過した。

コンピューターシステムの導入が急速に進む中での、思い出深い一夜であった。

※「Webマガジン ニュース・オブ・アジア」は2月14日18:40に入国した邦人に話を聞くことができたが、その時点ではすでにシステムの不具合は解消されている様子であったとのことである。

※2021年7月8日、一部記事内容を修正しました。

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