現地報道によると、今年初め、カトマンズ盆地内の大気汚染レベルが観測史上最悪となった。Onlinekhabar.comは、ネパール政府の環境部門高官の話として、1月4日午後7時に376.19㎍/㎥の汚染度が記録されたことを伝えている。主な原因は車両排気で、風が吹かなかったために盆地内の空気が停滞しているという。また、世界の主要93都市の中で最もひどい状態だったと報じられてる。

こうした事態を受けて1月5日、ネパールの保健人口省管轄下の「保健緊急事態及び災害マネジメント団保健緊急事態オペレーションセンター」は告知を出し、カトマンズ盆地内の大気汚染のレベルが呼吸困難を含め様々な健康被害をもたらすレベルにまで高まっていることを伝えた。そして、法に基づいた安全対策は決まっていないとしたうえで、応急措置として以下の対策と取るよう関係者全員に要請した。内容は以下のとおりで、これには、ネパールで一般に「モーニングワーク」と呼ばれ、習慣にしている人も多い早朝の運動を自粛することも含まれている。
1. モーニングワークに出かけたり屋外で運動したりしている人は、数日の間やめましょう
2. ゴミを適正に処理しましょう。しかし、ゴミを(自分で)焼却することはやめましょう。誰かが燃やしていたら、やめさせましょう。
3. 外出を控えましょう。やむを得ず外出する場合はマスクを必ず着用し、コロナ対策として定められた安全策を守りましょう。
4. 数日の間、砂埃や煙を発生させる種類の職業、商売、建設を停止しましょう。数日後にそのような種類の職業、商売、建設を再開する場合には、砂埃や煙がたたないように、あるいは少なくなるように対策しましょう。


南部の平野でも深刻な汚染度を観測
しかし、深刻な大気汚染が観測されているのはカトマンズ盆地内だけではない。ネパールの南部地方には平野部が広がっているが、ネパール森林環境省環境部門のウェブサイトによれば、その地方でも大気汚染が深刻だ。
1月14日分の24時間で計測された汚染度が一番高かったのはシマラで、合計で空気中に浮遊する汚染物質の量は382.69 µg/m³と観測されている。大気汚染の度合いを示す指標としてネパールは米国環境保護庁の定めるAQI1を採用しているが、その指標によれば同日は279に該当した。これは、7段階あるうち3番目に危険度が高い「とても不健康(Very Unhealthy)」に当てはまる数値だ。
これは、「健康アラートの引き金となるだろうもので、すべての人がもっと深刻な健康被害を経験するかも知れないということを意味している」段階である。
シマラは中央タライの都市、ヘトウダとビルガンジの間に位置する場所。同日、他にも東タライの中心都市ビラトナガルでもAQIの数値で213を記録しており、こちらもカテゴリーは「とても不健康(Very Unhealthy)」であった。
新型コロナと大気汚染。ネパールでのマスク着用は、深刻な二重の意味を帯びている。

※内容を追加し、一部の単位表記を修正しました。
※用語解説 : 「AQI」
「Air Quality Index」の略称。米国環境保護庁(EPA)が各地点の大気汚染の状況を数値化して分かりやすく6段階に分けて色分けして示したものが代表的で、地表近くのオゾン、粒子状物質、一酸化炭素、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)、二酸化窒素の五大大気汚染物質を基に計算される。AQIの指標は、汚染された大気を吸ってから数時間から数日以内に顕れうる健康被害に的が絞られている。
数値は0-500までであり、0-50が「安全」、51-100が「中程度汚染」、101-150は「影響の出やすいグループの人にとっては不健康」、151-200は「(すべてのひとにとって)不健康」、201-300は「とても不健康」、301-400は「危険」、401-500は「とても危険」となっている。301以上の「危険」と「とても危険」は色分けは同じとなっているため、数値上は7段階、色分けは6段階となっている。
他の幾つかの国でも同様の取り組みがなされている。