例年より1週間早い6月12日にモンスーンが到来し、その影響による雨期を迎えているネパール。毎年この時期には雨による災害が引き起こされるが、今年は特に地滑り・土砂崩れによる被害が目立っている。発表されている、モンスーン到来から15日間に発生した地滑りと洪水の統計によれば、今年は同期間中に発生した地滑りの数が過去10年間で最多となっているのだ。また、死者数も昨年同期間の2倍以上となっている。
6月12日から7月14日午前10時までの間に雨関連の被害で確認された死者数の合計は112人、行方不明者47人、負傷者124人である。ネパール政府による「災害危機管理ポータル」のウェブサイト(Government of Nepal Nepal Disaster Risk Reduction Portal)に掲載された数字によれば、過去1週間に全国で84の地滑り(土砂崩れ)が起きており、大雨被害が48箇所、洪水被害が16箇所で起きている。モンスーン到来1か月を迎えて全国的に被害が拡大してきており、さらに続く可能性がある。
一例として、24時間の統計の中で記事執筆時点で入手可能な最新の公式情報に基づき、7月13日午前10時~7月14日午前10時までの24時間に起きた災害の事例を紹介する。
※1 内訳:地滑り93人 洪水2人 落雷17人
※2 内訳:地滑り42人 洪水5人
※3 内訳:地滑り81人 洪水1人 落雷42人

24時間で11人死亡、7人負傷、4人行方不明。建物88棟被害、逃げ出した魚は推定10万匹
ネパール政府の発表によると、7月13日午前8時45分から14日午前8時45分にかけて、全国219か所にある観測所のうち、131箇所で降雨が観測された。最大降雨量が観測されたのは、ネパール中央部に位置するガンダキ州シャンジャ郡のチャプコート観測所の121.6ミリであった。2か所以上で100ミリ以上、12か所で50ミリ以上、27か所で25ミリ以上、そして58か所で10ミリ以上の降雨が観測された。
こうした雨に伴って各地で被害が発生している。7月14日の1日だけでも、全国77郡中16の郡で被害が発生し、7人が負傷、4人が行方不明になり、11人が命を落としている。10人が避難を余儀なくされ、88棟の建物が全半壊若しくは一部損壊し、3台の自動車が損傷している。9頭の家畜も命を落とし、推定10万匹の魚が池から逃げ出したと報告されている。
以下に各地の被害状況を掲載しているが、ネパールの地方には土や木などでできたそれほど頑丈でない住居も一般に存在しており、雨が降り続くことによって直接に被害が及ぶことがあるという点にご留意いただきたい。
大雨(降り続く雨)による直接の被害
ダンクタ郡のジョルパティ村第2地区コプトルで、降り続く雨によって家畜小屋1棟が壊れ、4頭のヤギが死亡した。約6万2,300円相当(7万ネパールルピー。レート換算は7月14日時点の為替相場に基づく。以下同様。)の損害。
ソールクンブ郡ドゥードゥコシ村第6地区でも1棟の建物が、地盤陥没により損壊した。
サルラヒ郡イスワルプル市第15地区に位置する住居1棟が、降り続く雨によって全壊し、約7万1200円相当(8万ネパールルピー)の損害。同じくカダク市第1地区でも家が損壊して約4万4500円相当(5万ネパールルピー)の損害。ビシュヌ村第8地区でも雨によって家畜小屋が倒壊して約3万5600円相当(4万ネパールルピー)の損害が出ている。
パルサ郡バフダルマイ市第2地区では降りやまない雨によって住居3棟が全壊し3人が負傷した。
サプタリ郡ダクネシュオリ市第3地区でも降り続く雨によって住居1棟が損壊し、約4万7100円相当(5万3000ネパールルピー)の損害が発生。
ロウタハット郡ガディマイ市第9地区マラヒトールで、降り続く雨によって住居1棟が全壊し、約151万2000円相当(170万ネパールルピー)の損害が出ている。パロハ市第9地区ラムプルカープでも7つの家畜小屋が一部損壊し、約35万5800円相当(40万ネパールルピー)の損害となった。ゴウル市第2地区ムサハルでは4棟の住居が損壊して約7万8300円相当(8万8000ネパールルピー)の損害。
西ナワルパラシ郡ススタ村第3地区では、降り続く雨によって住居1棟が全壊し、約5万3400円相当(6万ネパールルピー)の損害。
地滑り(土砂崩れ)による被害
サンクワサバ郡のカードゥバリ市第1地区の住居1棟が、上から落ちてきた土の塊によって全体が損傷した。約17万8000円相当(約20万ネパールルピー)の損害。
ボズプル郡のタャムケマイユム村第2地区シュリダレにある中央山間部公道(ネパール語名:マッデェパハディロクマルガ)が土砂崩れによって通行が完全に阻害されている。
タナフ郡ビャース市第9地区マーズファータで起きた土砂崩れで2軒が埋まり、11人が死亡した。2人行方不明になっており、3人ケガを負っている。また第3地区のマディ橋の近くでもプリットゥヴィハイウェイ上に土砂崩れが起き、通行が阻害されている。さらに、第10地区アデャリバリャンでも土砂崩れによって1軒の家が全壊した。第11地区オダレでも1軒が土砂の下敷きになり1人の行方が分かっていない。
シャンジャ郡では、プタリバザール市第1地区のシラフで、整備工場が土砂崩れの下敷きになって負傷者1名。シッダールタハイウェイも通行が完全に阻害されている。アルジュンチョウパリ村第6地区の家畜小屋が1棟土砂崩れの下敷きになり、水牛1頭、雄牛1頭、ヤギ3頭が犠牲になった。
パルヴァット郡クスマ市第8地区チュワでもポカラ-バグルン道上に土砂崩れが起こり、通行が完全に阻害されている。ジャルジャラ村第3地区の境界であるベニ―ポカラ道のアー川では、ジープがぬかるみにはまっているところに土石を含む泥が落下してきてジープの半分が埋まってしまった。この事故で道路は全く通行できない状態となっている。
東ナワルパラシ郡トゥリベニ村第2地区ギウコラにある東西公道上に土砂崩れがあり、全く通行できない状態となっている。この土砂崩れにトラックと自動車が1台ずつ軽度の被害を被っている。
東ルクム郡シスネ村第1地区ラトゥワマレで土砂崩れに巻き込まれた住居1棟が倒壊した。
河川氾濫、堤防決壊、洪水等による浸水被害
西ナワルパラシ郡サラワル村第6地区に位置するジャラヒ川及びダネワ川の水位が上昇したことで、ラムプルカダウナ、マダワリヤ、ノウディハワ村で合計42棟の住宅が浸水被害にあった。そのうち10家族は親戚の家に身を寄せている。
ウダイェプル郡トゥリユガ市では第2地区にあるスクナイ川の堤防が決壊し、サヌワナムナの16軒の住居に浸水被害が生じた。
シラハ郡ラハン市第17地区ハリプルで、バラン川が氾濫し、薪を集めに川に行っていた1人が行方不明になっている。
サプタリ郡ティラティ・コイラディ村第1地区ベルヒにあるカド川の水が池(魚の養殖池と思われる)に流入し、推定10万匹の魚が逃げ出した。自動車整備工場も浸水し、約4万4500円相当(5万ネパールルピー)の損害が出ている。魚の推定損害額は公表されていない。
今後の展望
ネパール政府の水文気象学部局が発表したところによれば、7月15日には全国的に河川の水位は危険水位を下回っており、小規模河川で急激な増水が起こる可能性も含めて、向こう3日間は河川氾濫の危険は少ないと予想されている。
雨期の中ほどにある被災地の人々にとって、つかの間の休息と言えそうだ。
負傷者治療は無料にすると決定—対策会議
7月15日、「7月11日に開催された災害危機管理及び対策国家会議の第四回会合にて下された決定事項」(原名:मिति २०७७/०३/२७ गते बसेको विपद् जोखिम न्यूनीकरण तथा व्यवस्थापन राष्ट्रिय परिषद्को चौथो बैठकका निर्णयहरू)が公開された。それによれば、モンスーン期間中の洪水、地滑り、浸水、浸食による負傷者の治療は無料でなされるように取り決めを設けると決定された、とされている。
(一部内容を修正しました。)