
インドで大量発生のバッタの群れ、ついにネパールに侵入
ヒト以外の生物に国境は関係ない。新型コロナウイルス感染対策で国際線フライトが停止中のネパールで6月27日、国境をゆうゆうと飛び越えてきたのはバッタの群れだ。大量発生してアフリカや中東、インドで大きな農業被害をもたらしているサバクトビバッタがついにネパールにも到着した。
まずインドとの国境を接するバラ郡、パルサ郡、サルラヒ郡、ルーパンデヒ郡といった地域に‟入国”したバッタの群れは、その日のうちに少し北側のシンドゥリ郡にも到達している。その後、山間部やヒマラヤ山脈付近を含めネパールの各地の50以上の郡に広がっていった。
この種のバッタはネパール語ではサラハと呼ばれている。それに対して一般的なバッタはファテングラと呼ばれていて区別されている。報道によれば、ネパールではこの種のバッタ(サラハ)は馴染みがないという。
田植えとトウモロコシの収穫シーズンと重なっているこの時期の未知のバッタ到来の知らせによって、農家の間には一気に不安が広がった。とはいえ、1週間経った現時点までにバッタの数は減少に向かっており、当初予想されたほどの全国的な甚大な被害は出ていないようである。現地報道では、雨期を迎えているネパールの気候や風向き、高所の多い地形や侵入したバッタの成熟度等の要因によって被害が抑えられているとされている。もっとも、全国的な被害の全貌はまだ明らかになっていない。被害の大きかった地方としては、ダン郡、ピュータン郡、マクワンプル郡、およびアルガカーチ郡の農地それぞれ580ヘクタール、283ヘクタール、100ヘクタール、100ヘクタールであると報道されている。
バッタ対策として各地で報奨金も


どのような対策が可能なのだろうか。農業畜産開発省※1は、休息中のバッタに薬剤を散布すること、畑に網などをかけて侵入を防ぐこと、大きな音や煙で追いやることなどを挙ている。また、高タンパク源であることから、捕獲して家畜のえさにすることも対策の一つに挙げられている。もちろん、家畜だけでなく人が食用にすることも可能だ。実際、この種のバッタが食用に適するかどうかはメディアでも取り上げられる話題となっており、ネパールでも新たな‟食糧”を試してみる人が増えているようだ。
また、地方政府の中には、市民が捕獲したバッタに対して報奨金を支払うと発表しているところもある。金額はまちまちだが、例を挙げると、スドゥルパスチム州はバッタ1kgあたり25ルピー、カトマンズ郡トカ市も1kgあたり50ルピー、ラリトプル郡は「規定にしたがって」となっている。
Covid-19、ロックダウン、そしてサラハ(バッタ)。暗い意味合いの新しい単語が次々と記憶に刻まれる2020年も気が付けば、もう後半に突入した。この先、どのような半年が待っているのであろうか。
※1 日本語訳は弊社によるものです。ネパール語名:कृषि तथा पशुपन्छी विकास मन्त्रालय 英語名:Ministry of Agriculture and Livestock Development