
ネパールで生活する日本人にとって気になるのは、円とネパールルピーの為替レートだ。
2021年は、円安ルピー高が進行した一年だった。ネパールの中央銀行であるネパール国家銀行が公表している統計によれば、買値ベースで、年初には10円=11.31ルピーで取引が行われていたが、12月31日には10円=10.31ルピーとなり、ちょうど1ルピー値を下げている。
ネパールルピー相場を語るには、インドルピーのことが欠かせない。ネパールルピー為替は、隣国の通貨であるインドルピーとは固定相場制となっているため、各国通貨に対するインドルピーの為替相場とほぼ同じような値動きになることが多いからだ。そして、これまでのところ、インドでの新型コロナウイルス感染拡大と時をほぼ同じくして、ネパールでも感染が広がってきた。年初から徐々に進行してきた円安が突如として円高に転じた4月初旬から5月にかけての期間は、まさにインドおよびネパールでデルタ株による凄まじい感染爆発(新型コロナウイルス感染拡大第二波)が起きていた時期だ。
この頃の状況について、日本経済新聞(Web版)は4月13日配信の記事※で「インドルピーが逆風にさらされている。12日には対ドルで1ドル=75ルピー程度までルピー安・ドル高が進んだ。インドでは新型コロナウイルスの1日あたりの新規感染者数が16万人超と過去最悪の水準となるなど、感染拡大が止まらない。資金流出懸念からルピーには先安観が強い。」と報じている。この後、インドおよびネパールでは1日あたりの感染者数がさらに拡大していった。
その後、一旦感染拡大のペースが落ち着き始めたものの、ネパールでもその後7月から8月にかけて再び感染が拡大。第二波ほどの大きな波にはならなかったものの、第三波が到来した。この時も、新型コロナウイルスの感染拡大・収束の時期と円高・円安の時期は概ね一致している。
ネパールでオミクロン株の感染者が初めて確認されたのは、12月6日。インドでは12月3日であった。その2週間ほど前から対ネパールルピー相場は再び円高に転じて一時10円=10.7ルピーまで進行したが、その後再び急速な円安に転じた。12月31日には、年内最安値タイの10.31ルピーとなった。現在までに、ネパールで感染が確認されて報告されているオミクロン株感染者数は3人にとどまっている。
※https://www.nikkei.com/article/DGXKZO70939240T10C21A4ENI000/