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超頻出ネパール語動詞「हुनु(フヌ)」を徹底的に理解する

記事公開日: 2021年5月2日
ネパール、ダイレク郡で撮影 「हुनु」の理解もこのくらいクリアになろう
(ネパール・ダイレク郡で2019年1月撮影)

合同会社アジア・パブリック・インフォメーションがお届けする、本気でネパール語を習得したい人のための解説ページ。今回は、主語に応じた動詞の変化シリーズから一旦外れて、超頻出のネパール語動詞「हुनु」を徹底的に解説していきます。超頻出というよりも、この動詞なくしてはネパール語は成り立たない、と言えるほど根幹にかかわる単語です。今回解説するのは特に、意味と用法についてです。形については前回解説していますので、そちらをご覧ください。もっとも、意味や用法についてのベーシックな部分は前回も解説していますので一部は繰り返しになりますが、なるべく重複を避けつつ、ネパール語動詞「हुनु」について一気に掘り下げていきたいと思います。

ネパール語動詞「हुनु」の現在形は3パターン

前回の解説にもありましたが、以下の表のとおり、ネパール語動詞「हुनु」の現在形は「हो」系、「छ」系、「हुन्छ」系の3パターンに分かれます。基本的な訳は、「だ/です/である」でしたね。それでも、その前に来る言葉によって、変化の仕方が分かれます。

では、それぞれの意味・用法を概観してみましょう。

「हुनु」の3つの現在形

意味

हो名詞・名詞句に続いて「だ/です/である」
1. 特定の状態にあることを示す「だ/です/である」。形容詞に続いて使用される。

2. 存在していることを示す「だ/です/である」「ある」。

主語か、場所を表わす単語に続いて使用される。

हुन्छ1. 「なる」。
2. 普遍の状態であることを示す「(もの)だ/(もの)です/(もの)である」
3. 何かの出来事が起きる(上記1の「なる」とほぼ同様)
4. 許可。「して良い。」

ネパール語学習を始めたばかりの方にとっては、「हो」の用法は一つだけですので、なんとなく取っつきやすく感じるのではないでしょうか。「छ」もなんとかいけそうな気がするかと思いますが、「हुन्छ」はなんと4つ…。それに、「छ」にも「हुन्छ」にも、「状態」を表わす用法があります。実際の会話や記述において「छ」を使ったらいいのか「हुन्छ」の方がいいのか迷う場面が出てくることも確かです。このページでそれぞれについて詳細に解説していますので、しっかり押さえておきましょう。

「हुनु」の現在形変化①:「हो」

まずは、「हो」についてです。

「हो」は、基本的には、名詞や名詞句に続いて用いられます。「主語=(名詞で表されるもの)」という構造の文における「=」に該当する、というような説明もできるでしょう。例を挙げた方が分かりやすいと思いますので、以下の例文をご覧ください。次の日本語文にある「です」はすべて、ネパール語では「हो」に該当します。(少し日本語が不自然な文も含まれていますが、ネパール語では自然な言い回しです。「हो」の用法を分かりやすくするため敢えて直訳気味に記してあります。)

例1)私は日本人です。 

例2) 私たちはネパール語の学生です。

例3)主要なのは(大事なのは)やる気です。

例4)時は今です。(今こそやるべき時です)。

ネパール語はそれぞれ、以下のようになります。

例1) म जापानी हुँ।

例2)हामी नेपाली भाषाका विद्यार्थीहरू हौँ।

例3)मुख्य कुरा इच्छुक मनोवृत्ती हो।

例4)बेला अहिल्यै हो।

ご覧のとおり、例1)では、「日本人(जापानी)」、例2)では「学生(विद्यार्थीहरू)」、例3)では「やる気(इच्छुक मनोवृत्ती1「मनोवृत्ती」は「態度」という意味の名詞です。これに、「意欲的な」を意味する形容詞「इच्छुक」が修飾しています。)」に、例4)では「今(अहिल्यै)」という名詞に「हो」が続いています2「हो」が主語に応じてどう変化するかについては、こちらでご確認ください。

繰り返しますが、「हो」の基本は、「(名詞)です」です。従って、次のような短い文も普通に使用されます。

例5)म हुँ।(私です/僕だよ/俺だ)

「हो」の変化が主語にきちんと対応しない時

さて、上記の例すべては、「हो」が主語にきちんと対応して変化しています。正確なネパール語です。ところが、日常会話では、主語と動詞「हो」の形が対応していない表現も多々耳にします。例えば…

例6)म पनि मान्छे हो।(私も人間です。)

「म」に対応して「हुँ」となるはずですが、「हो」となっています。どうしてこうなったのでしょうか。

これは、話し手の強調点が「私」ではなく「人間」という名詞にあることから生じていると考えると分かりやすいです。言語ですから、文法だけではなく、話者(書き手)の感情や気持ちと結びついています。「私も人間です」と言いたくなるような場面では、話し手は何を言いたいのでしょうか。「私だ!」と言いたいのでしょうか。それとも「人間だ!」でしょうか。恐らくほとんどの場合は、人間らしく大切に扱ってほしい、とか、自分だって人間なんだから間違いを犯してしまうこともありますよ…と理解を求めているとか、そういうことではないでしょうか。やはり、「私」ではなく「人間」の方に強調点があります。それで、「हो」が文の主語の「म」ではなく、重きが置かれている方の「मान्छे」に対応しています。

文法的には、「मान्छे(人間)」は三人称単数現在形です。この文の主語は飽くまで「自分」ですので尊敬表現は使われません。それで、「हो」が採用された、というわけです。もちろん、ネイティブの話者はこんなことを意識しながら発言しているわけではありませんが。

さて、次のような文もあります。

例7)तपाईं हो?(あなたですか?)

この文、文法的に正確なのは「तपाईं हुनुहुन्छ?」ですね。では、なぜ「हो」なのでしょうか。

これには、二つの要素が関係しています。省略されている語句と、気持ちの中で相手に抱いている尊敬の度合いです。

まずは、省略されている部分について考えてみましょう。この文は、疑問形になっていますね。多くの場合は、「तपाईं(あなた)」の前に、「次の順番の人は」、「電話をしてきたのは」、「これをやったのは」といったような語句が省かれています。文脈から明らかということですね。これらは全て、厳密には「人」という三人称単数の主語となっています。その現在形ですね。

そして、もう一つ関係するのが、先ほども出てきた話者(書き手)の感情や気持ちです。厳密な主語と言える「人」は省略されているわけですし、相手が「तपाईंं」なのですから、「हुनुहुन्छ」を使っても良さそうです。そして本当に尊敬している相手や改まった場面では、「तपाईं हुनुहुन्छ?」が当然用いられます。それが、「हो」になっているところに、「तपाईं」という単語の選択とは必ずしも一致しない心の中での尊敬の程度が表れている、ということです。

もっとも、以前の記事で解説しているとおり、尊敬度が低いと言うのは、必ずしも悪感情を意味している訳ではありません。文法の正確な習得を目指しつつも、言語は人と人との間で使われるものだ、という視点も忘れたくないですね。

今回は疑問文を例にしましたが、当然ながらこの用法は疑問文に限って用いられるわけではありません。

【主語と尊敬度の関係については以下の記事で解説されています】

ネパール語の主語①—代名詞に表れる尊敬度の違い | Webマガジン ニュース・オブ・アジア

実は、形容詞に続く「हो」も存在する…

さて、「हो」が名詞の後に続く、というのが基本的な用法だと説明してきました。ですが、実は、以下の例のように形容詞に続いて用いられることもあります。

例8)म सन्चै हो।(私は元気だよ。)

例9) यस्तै हो।(こういうものだよ。)

例10)यो त धेरै हो।(これは多いですね…。)

これにはきちんとした理由と、同じように形容詞に続いて用いられる「छ」との使い分けがあります。それについては、「छ」について解説した後に説明したいと思います。

「हुनु」の現在形変化②:「छ」

ここからは、「हुनु」の現在形がとる二つ目の変化形「छ」について考えていきましょう。最初の表にあるとおり、これには「状態」と「存在」を表わす二通りの用法があります。「存在」を表わす用法の方が分かりやすいと思いますので、まずはそちらから取り組みましょう。

存在を表わす「छ」

これは、「छ」系の形をとった「हुनु」が「あります。」という何かの存在を示す用法です。やはり、幾つか例文を見て確認してみましょう。

例11)私はここにいます。(म यहाँ छु।)

例12)3匹の犬がいる。(तीन वटा कुकुरहरू छन्।)

例13)問題がある。(समस्या छ।)

これ以上の説明のしようがないほど、単純です。「छ」系の「हुनु」が、主語が「ある」ということ、存在しているということを表わしています。

ネパール語には「持っている(所有している)」という単語が存在しない

実は、ネパール語には何かを持っているということを表わす動詞がありません。ここで言う「持っている」とは、所有している、あるいは携えているという意味で、物理的に手で「掴んでいる」という意味ではありません3物理的に手に掴んでいることを意味する単語は「समात्नु」で、別に存在します。また、「携行している」という意味を特に言いたい場合には「बोक्नु」という動詞を用いた表現もあります。。では、所有していることを言いたいときには、何と言えば良いのでしょうか?この「छ」が使われます。

そして、「(所有者と)共にある」という表現を使います。「共に」という意味の単語は「सित」や「सँग」です。例をみましょう。

例14)ペン持ってますか?(तपाईंसँग पेन छ?)

例15)鍵は私が持っています。(चाबी मसँग छ।)

それぞれ字義訳すると、「तपाईंसँग(あなたと共に)/ पेन(ペン) / छ?(あるか?)」「चाबी(鍵)/ मसँग(私と共に) / छ।(ある。)」となります。注意が必要なのは、日本語とネパール語とで主語が異なっているということです。日本語では「私」や、省略されている「あなた」が主語ですが、ネパール語の文では飽くまで「ペン」や「鍵」が主語になります。それで、「छ」が用いられています。所有しているものが複数形であれば、「छन्」が用いられることになりますね。

参考||「時間はたくさんありますよ」と言いたい時にも、この用法を使って「मसँग समय धेरै छ।」と表現できます。

特定の状態を表わす「छ」

「छ」系「हुनु」のもう一つの用法は、形容詞とセットで使われて、その文の主語がある特定の状態にあることを示す、というものです。「(状態)です」の「です」に該当します。言葉を並べても難しいですので、例文を見ていきましょう。

例16)お元気ですか?(तपाईं सन्चै हुनुहुन्छ?)

例17)今日は暑いです。(आज गर्मी छ।)

例18)私たちはネパール語を学びたいです。(हामी नेपाली भाषा सिक्न इच्छुक छौँ।)

それぞれ、「元気である」という状態、「暑い」という状態、「やる気がある」という状態「です(छ)」と言っているわけですね。このように、「छ」系の「हुनु」で状態を表わすことができます。

ただし、注意が必要なのは、「छ」は通常、ある特定の状態だけを表わす、ということです。一時的な状態、と言うともっと正確かも知れません。上の例を考えてみると、今は元気でも、明日はそうではないかも知れません。今日は暑くても、明日はそうではないかも知れません。今はネパール語を学びたくても…(!?)。

というわけで、「छ」系は、特定の、あるいは一時的な状態を言っているわけです。とはいえ、敢えて「一時的だ」ということが強調されている表現ではありません。

ネパールの緑 ネパール語学習中に気分転換を
(ネパール・カスキ郡ポカラ市にて、2019年7月10日撮影)

では、普遍的な、あるいは恒久的な状態を言いたいときにはどうすればいいのでしょうか?その場合には「हुन्छ」系を用いることになります。ですが、まずはここまで学んできたことろで、先ほど保留にしておいた、「हो」と「छ」の微妙な使い分けについて考えてみましょう。

「हो」と「छ」の微妙な使い分けを見分ける

基本的には名詞の後に続く「हो」も、形容詞の後に続くことがあります。ですが、飽くまで「名詞」を指して「です」と言っているという事実は変わりません。ちょっと次の日本語の違いに注目してみましょう。

a)これは青です。

b)これは青いです。

一見すると同じようですが、ニュアンスが異なっていますね。a)は、「これ」というもの(色)は「青」という色だ、と言っているのに対し、b)は、「青い」という状態を言っています。「青い」というのは形容ですが、「青という色」は名詞ですね。では、a)とb)の「です」はそれぞれ、ネパール語ではどちらになるでしょうか?答えは、こうです。

a)यो नीलो हो।

b)यो नीलो छ।

もっとも、「青」は名詞で「青い」は形容詞ですので、この例だけでは「हो」が形容詞の後に続いているとは言えません。ですが、使い分けの感覚をつかむ上でこれを意識しているかどうかは大きな違いとなります。

先ほどの例9)をもう一度見てみましょう。「हो」ではなく「छ」を使った場合の日本語訳と見比べてみてください。4この例文には主語がありません。こういった構文については、「ネパール語の主語②—「レ」や倒置法、意味上の主語」にて解説されています。

例9-a)यस्तै हो।(こういうものですよ。)

例9-b)यस्तै छ।(このようです。)

似ていますが、ニュアンスが違いますね。そして、a)の方では日本語訳には「もの」という名詞が入っています。「यस्तो(このような)」は形容詞5例文中の「यस्तै」は「यस्तो」の強調形です。ですが、しかし話し手が言いたいのは「大体いつもこうですよ」と言う意味での「こういうものですよ」。「名詞」+「です」という構造です。こういう表現には、「छ」ではなく「हो」が使われます。

それに対して、b)では、その時点での状態が「このような」だと言っているわけです。

以下に幾つか例文を並べますので、いわば「あるなしクイズ」のような要領で見比べてみてください。きっと感覚がつかめてくると思います。一部、「हुनु」以外にも若干変化しているものがあります。これは、やはり両者の意味合いの違いから、自然と表現全体に表れてくる違いです。そういった点も、意味合いをつかむのに役立つことでしょう。

「हो」系

  • यो त गाह्रै हो।(これは難しいことですね。)
  • यो त धेरै हो।(これは多いですよ。)
  • खुसी नै हो।(喜ばしいですよ。)
  • यो मिठो हो।(これ美味しいですよ。)
  • तिनीहरू आनन्दित हुन्।(彼らは幸せ者だ。)
  • कुरा गम्भीर हो।(話は深刻なものです。)
  • मान्छे त राम्रै हो।(いい人ではあります。)

などなど…。

「छ」系

  • यो त गाह्रै छ।(これは難しいです。)
  • यो त धेरै छ।(これは多いです。)
  • खुसी नै छ।(喜んでいます。)
  • यो मिठो छ।(これ美味しいです。)
  • तिनीहरू आनन्दित छन्।(彼らは幸せです。)
  • कुरा गम्भीर छ।(話は深刻です。)
  • मान्छे त राम्रै छ।(人はいいですね。)

などなど…。

つまりは…主語に力点がある場合は「हो」系!

見比べてみてお気づきになったかと思いますが、「हो」が使われる場合は、話者の力点(強調点)が主語に置かれています。そのため、「こと」や「人」といったような名詞が形容詞の後に省略されていると考えることもできます。やはり、「हो」系は名詞とのつながりが強いのです。

それに対して、「छ」が用いられた場合には形容詞に力点が置かれています。

「名詞+छ」と「名詞+हो」は全く別物です

さて、ここまで考えてくると混同してしまうこともあるかと思いますので、一点だけ補足を。上記で解説した「हो」と「छ」の使い分けが分かりにくくなるのは、動詞「हुनु」が形容詞に続く場合のみです。名詞の後に「छ」系の「हुनु」が来た場合は「存在」を表しますし、名詞の後に「हो」系の「हुनु」が来た場合、それは「主語=名詞」という構造の「=」です。最初の方で解説したとおりですね。

しっかり区別して覚えておきましょう。

「हुनु」の現在形変化③:「हुन्छ」

では、ここからは「हुनु」の現在形がとる3つ目のパターン「हुन्छ」系を見ていきましょう。

記事の最初で触れているとおり、これには次の4つの意味があります6ネパール語辞典ではさらに細かい分類がなされていますが、日本語に訳した場合には意味の相違が全く生じないものもあるため、そういったものは除外してあります。

  1. 「なる」
  2. 普遍的な状態・性質を表わす「(もの)です」
  3. 出来事が「起こる」
  4. 許可・承諾

それぞれについて解説していきます。

【「हुन्छ」系(現在形)が主語に応じてどう変化するかについては以下の記事をご覧ください。】

主語に応じたネパール語動詞の変化②—ネパール語の”be動詞”「हुनु」の変化 | Webマガジン ニュース・オブ・アジア

1. 「なる」という意味の「हुन्छ」

これは、そのままですね。「हुन्छ」という単語に「なる」という意味があります。これが「हुन्छ」の第一義でその他3つの意味を貫いているように見受けられます。例文を幾つか見てみましょう。日本語は字義訳と意味訳を一部で並列しています。

例19)यसो गर्यो भने सजिलो हुन्छ। (こうやったら楽になるよ。)

例20)भात धेरै हुन्छ।(ご飯が多くなるよ。《ご飯多くよそい過ぎだよ。》)

例21)यति बाँकी हुन्छ।(これだけ残りになります。《これだけ残ります。》)

上記の例にあるとおり、「なる」という言葉そのものの使われ方が日本語とは少し異なりますので、そこは多くの表現に触れて慣れる必要がありますが、「हुन्छ」が「なる」という意味だということはよくお分かりいただけたのではないでしょうか。

「बन्नु」との使い分けは?

ネパール語には、「なる」という意味の単語がもう一つあります。それが、「बन्नु」です。今回は「हुनु」の解説ですので、「बन्नु」については詳述しませんが、大まかに以下の使い分けができます。

「名詞」になる→「बन्नु」

「形容詞」になる→「हुन्छ」

例えば、「私は医者になる」という時は「बन्नु」、「病気が良くなる」という時には「हुन्छ」が使われることが一般的です。ただし、これは明確な区別ではなく、「हुन्छ」を名詞とセットで、また「बन्नु」を形容詞とセットで使用することも可能です。

2. 普遍的な状態・性質を表わす「हुन्छ」

特定の状態や一時的な状態を表わす「हुनु」の形は「छ」系でした。これに対して普遍的な状態を表すには「हुन्छ」を使います。例文をご覧ください。

例22-a)空は青い。(आकाश नीलो हुन्छ।)

例23-a)ネパール料理は美味しい。(नेपाली खाना मिठो हुन्छ।)

例24-a)コンピューターは高いものだ。(कम्प्युटर महङ्गो हुन्छ।)

例22-b)(今)空が青い。(आकाश नीलो छ।)

例22-b)この料理は美味しい。(यो खाना मिठो छ।)

例22-b)このコンピューターは高い。(यो कम्प्युटर महङ्गो छ।)

このように、いつでも変わらない、あるいは一般的にそうだと認められている状態について言う時には、「छ」系ではなく「हुन्छ」系が用いられます。とはいえ、前述のとおり、「छ」系は単にその時、そのモノの状態を述べているにすぎず、特に他の時の状態と比べているわけではありません。

3. 出来事が「起こる」という意味の「हुन्छ」

これは、日本語においては1の「なる」とほとんど変わらない意味になります。例えば、「事故が起こる」。これは、ネパール語では「दुरुघटना हुन्छ।」と言いますが、「事故が起こる」ではなく「事故になる」と訳しても何も間違いではありませんね。とはいえ、状態や性質が変化して新しいものに「なる」わけではありませんので、その意味では「なる」とは区別されます。実際の会話や文章ではこの区別を意識することはまずないと言えるでしょう。

それでも、敢えて区別してあるのには理由があります。この意味で使われる表現として「आज बेल्का कार्यक्रम हुन्छ।」というようなものがあります。「今晩催しがあります。」という意味です。この場合の「हुन्छ」を「なる」と考えては、やはりちょっと違和感がありますね。「催しが起こる」と言うのは日本語的には変な表現ですが、ネパール語では、この「हुन्छ」がよく使われます。

また、この意味においては「हुन्छ」と複数形主語に対応する「हुन्छन्」の2つの形くらいしか取られません。考えてみれば、それもそのはず、主語が「出来事」「イベント」「催し」といったものになるからです。

「घट्नु」との使い分けは?

「起こる」という意味の「घट्नु」という動詞もあります。事件・事故のような出来事に関しては「हुन्छ」と「घट्नु」は交換可能です。しかし、「催しがある」という場合の「हुन्छ」に「घट्नु」は合いません。

4. 許可を与えたり承諾を表わしたりする「हुन्छ」

最後に、許可や承諾を表わす「हुन्छ」があります。ネパール語を勉強し始めた方なら、ネパール人が首をかしげながら(振りながら)、「フンチャ、フンチャ。」と言っているのを目にしたことがあるはずです。あの「हुन्छ」です。

OKであれば「हुन्छ」、NGであれば「हुँदैन」と言います。

これは何も必ず単体で使われるわけではなく、「म अब जापानीज भाषा बोल्न हुन्छ?(ここからは日本語を話していいですか?)」といったように文の中でも用いられます。

この場合、主語による変化はなし

これも当然と言えば当然ですが、この「हुन्छ」の主語は存在しないか、あっても必ず「~をすること」という三単現低尊敬の主語となりますので、「हुनु」が取る形は「हुन्छ」のみです。他の形が用いられることはありません。

ネパール・ポカラの犬 ネパール語学習もリラックスしていきましょう
(ネパールの犬、気持ちよく昼寝中。2020年11月、カスキ郡ポカラ市にて撮影。一部加工してあります。)

原形「हुनु」は当然すべての意味を持っている

さて、ここまで膨大な分量を割いて、「हो」系、「छ」系、「हुन्छ」系それぞれの意味するところを考えてきました。それでも、一度原点に帰ってみたいと思います。これら3パターンの元々の形、原形は「हुनु」でした。ネパール語の文の中に原形「हुनु」が登場することもよくあります。原形ですので、当然上記すべての意味を含んでいます。

例文を見ていきましょう。

例25)तपाईं शिक्षक हुनु पर्छ। (あなたはきっと先生ですね。) ≪「名詞」+「हुनु」≫

例26)मेरो चाबी यहाँ हुनु पर्छ।(私のカギはここにあるはずです。) ≪「存在」の「छ」≫

例27)हामी आफै अग्रसर हुनु पर्छ।(私たち自らが意欲的でなければなりません。) ≪「状態」の「छ」≫

例28)हामी अझै अग्रसर हुनु पर्छ।(私たちはもっと意欲的にならなければなりません。) ≪「なる」の「हुन्छ」≫

例29)कम्प्युटर महङ्गो हुनु केही नौलो कुरा होइन।(コンピューターが高いというのは今に始まったことではない。) ≪「普遍の状態」の「हुन्छ」≫

例30)धेरै दुरुघटना हुने ठाउँ।(よく事故が起こる場所。) ≪「起こる」の「हुन्छ」≫

例31)हुने कुराहरू के हो र नहुने कुराहरू के हो, लेखिदिनुहोस् ।(いいこととダメなことを書き出してください。) ≪「許可」の「हुन्छ」≫

このように「हुनु」は多くの意味を含んでいるわけですが、基本的には「である」「なる」という日本語を当てはめてみて意味が通じるかどうかを確かめてみれば間違いありません。それで当てはまらなければ、「許可・承諾」の意味かな、と考えてみましょう。

「हुनु」の過去形は2パターンだけ!

「हुनु」の過去形も見ていきましょう。現在形は3系統でしたが、嬉しいことに過去形は「थियो」系と「भयो」系の2系統のみです。7正確には「हुन्थ्यो」系とも言うべきもう一つの形がありますが、それは習慣過去と呼ぶべきもので、「हुनु」以外の動詞にも共通する変化ですので、別の項で扱うことにしています。以下の表のとおりに使い分けます。

 現在形意味
「थियो」系「हो」系と「छ」系だった。/あった。
「भयो」系「हुन्छ」系なった。

以下、それぞれについて解説していきます。

「हो」と「छ」の過去形:「थियो」

「हो」と「छ」の過去形は「थियो」で共通しています。意味は、表にあるとおり、「だった」や「あった」です。これが、主語に応じて以下のように変化します。

人称単複尊敬度該当する主語対応する「थियो」の形
一人称単数थिएँ
複数हामी/ हामीहरूथियौँ
二人称単数・複数最高हजुर/ हजुरहरूहुनुहुन्थ्यो
単数・複数中・高तपाईं/ तपाईंहरूहुनुहुन्थ्यो
単数・複数तिमी/तिमीहरूथियौ
単数最低तँथिइस्
三人称単数・複数यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरूहुनुहुन्थ्यो
単数・複数यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरूथिए
複数यी/ तीथिए
単数यो/ त्यो/ ऊथियो
(ネパール語動詞「हुनु」の「हो」系と「छ」系の過去形「थियो」が主語によってどのように変化していくかを示している。「यहाँ/ यहाँहरू」は文脈によっては二人称と捉えることが可能な場合もあるが、文法上の分類としては三人称と捉える方が自然である。)

変化を覚えるコツ

これは形が変化するだけですので、記憶力にものを言わせる分野となります。意味や用法は変わりません。やはり、リズムで覚えてしまうことがコツです。現在形の変化を習得している人は、幾つかの共通点にお気づきになることでしょう。「म」に対応する変化にはやはり「ँ」が付いていますし、「हामी」には「ौँ」、「तिमी」には「ौ」、「तँ」の場合は「स्」で終わりますし、尊敬度が高ければ「हुनुहुन्」までが現在形と同じです。そう考えると、現在形に対して全く新しい形と言えるのは、「हुन्」が「थिए」になるくらいです。ネパール語の学習を始めると、動詞の変化の多さに圧倒される気がするかも知れませんが、そこは言語ですから、ルールなしの無秩序な変化ではないということを心の支えに頑張りましょう。

「हुन्छ」の過去形:「भयो」

では、「हुन्छ」の過去形である「भयो」の変化を見ていきましょう。過去形同士ですから、形の上で「थियो」系と共通する面が多いことにお気づきになることでしょう。

人称単複尊敬度該当する主語対応する「भयो」の形
一人称単数भएँ
複数हामी/ हामीहरूभयौँ
二人称単数・複数最高हजुर/ हजुरहरूहुनुभयो
単数・複数中・高तपाईं/ तपाईंहरूहुनुभयो
単数・複数तिमी/तिमीहरूभयौ
単数最低तँभइस्
三人称単数・複数यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरूहुनुभयो
単数・複数यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरूभए
複数यी/ तीभए
単数यो/ त्यो/ ऊभयो
(ネパール語動詞「हुनु」の現在形「हुन्छ」の過去形「भयो」が主語によってどのように変化していくかを示している。「यहाँ/ यहाँहरू」は文脈によっては二人称と捉えることが可能な場合もあるが、文法上の分類としては三人称と捉える方が自然である。)

「भयो」の意味を解説-これ一語だけで成立する文もある

前述の表で示したとおり、「भयो」の意味は「なった」です。これについてはあまり説明の必要はないかと思います。ですが、「なる」とは、ある一定の量や基準などに到達した、という意味でもある、ということを指摘しておきたいと思います。日本語に訳すことだけを考えれば、「भयो」=「なった」と理解しておいて困ることはほとんどありませんが、このこ