
合同会社アジア・パブリック・インフォメーションがお届けする、本気でネパール語を習得したい人のための解説ページ。今回は、「主語に応じたネパール語動詞の変化」第二弾。ネパール語の”be動詞”とも言うべき「हुनु」を徹底的に理解できるように何回かに分けて解説していきます。とはいえ、膨大な量になりますので、今回は現在形のみです。そして、それも「हुनु」の意味や用法ではなく、「形」に焦点を合わせています。それでも侮るなかれ、今回現在形をしっかり押さえれば、その他の時制で「हुनु」が取る形に関する理解もとても速くなります。そして、前回説明しているとおり、「हुनु」現在形の一形態である「छ」の変化を覚えることで、その他の動詞の変化を覚えるのもとても楽になっていきます。繰り返しますが、ネパール語動詞の変化は、リズムで覚えましょう!
ネパール語動詞「हुनु」とは何か―”be動詞”との比較
「形」に焦点を合わせるとは言え、ネパール語の超頻出動詞「हुनु」の最低限の意味と用法だけは事前に解説しておきたいと思います。英語の”be動詞”と比較して類似点と相違点をおさえるようにすると、把握しやすいと思います。
“be動詞”のおさらい
ここはネパール語の解説ページですので、英語が大の苦手、という方にもついてきていただけるよう、ここで英語の動詞「be」について学校で学んだことを簡単に振り返っておきたいと思います。
「be」は、主語に応じて「am」「are」「is」の3つの形に変化します。(いずれも現在形。)そして、日本語に訳すなら、文末の「だ/である/です」に該当します。
例えば、「I am a human.」と言えば、「私は人間です。」という意味ですし、「I am fine.」と言えば、「私は元気です。」という意味になります。ここでは、主語であらわされるものがその後の名詞で表されているものであるということ(上の例では、「私」は「人間」)や、主語であらわされるものが何らかの状態にあること(上の例では、「元気」という状態)を意味しています。
もう一つ忘れてならないは、存在を表わす用法です。
「いる/ある」を「am」「are」「is」で表すことができます。「I am here.」とは、「私はここにいる。」という意味ですね。日本語でも「私はここです」という表現で、自分が‟ここという場所”に存在していることを表わせます。
普段日本語を使っている時は一切意識しない点ですが、改めて他の言語と比較しながら考えてみると、理解が進みますね。
「です」と違うのは「be」にある「なる」という意味合い
共通点の多い「be」と「だ/です」ですが、異なる点もあります。それは、英語の「be」にある「なる」という意味合いが、日本語の「です」にはないという点です。例えば、次の英文では、「be」は「なる」と訳すのが自然です。
I will be industrious.
日本語訳はもちろん「私は勤勉(な人)になりたい。」です。[mfn]最後に「です」をつけても良いですが、「be」のもつ意味合いをはっきりさせるために、敢えて外してあります。[/mfn]これを、「私は(将来に)勤勉でありたいと願っています。」と訳すことも可能ですし、その場合の「be」は、前述の用法(何らかの状態にあること)と変わらないという言い方も可能ですが、この英語表現が現在が「industrial」ではないことを含んでいるということを考えると、やはり「なりたい」と訳す方が自然ですよね。
これが、「be」にはあって「です」にはない、「なる」という意味合いです。
ネパール語動詞「हुनु」と英語の「be」を比較する
では、ネパール語の動詞「हुनु」と英語の動詞「be」を比較しつつ、まずは類似点を見ていきましょう。
「हुनु」も、現在形だけで3つの形を取ります。「be」と同じですね。本解説では、三単現での形を基に「हो」系、「छ」系、「हुन्छ」系と三系統に分けて説明しています。それぞれが意味するところを以下の表にまとめました。
「हुनु」の3つの現在形 |
意味 |
---|---|
हो | 名詞・名詞句に続いて「だ/です/である」 |
छ | 1. 特定の状態にあることを示す「だ/です/である」 |
2. 存在していることを示す「だ/です/である」「ある」 | |
हुन्छ | 1. 「なる」。 |
2. 普遍の状態であることを示す「(もの)だ/(もの)です/(もの)である」 | |
3. 何かの出来事が起きる(上記1の「なる」とほぼ同様) | |
4. 許可。「して良い。」 |
「be」との類似点としては、3つの現在形があるというだけでなく、名詞に続く「です」や、特定の状態にあることを示す「です」、さらには存在していることを示す「です」と同じ用法が「हुनु」 にもある、という点が挙げられます。
これらはネパール語動詞「हुनु」の根幹をなす意味でもありますので、やはり「हुनु」を英語の「be」と同じのイメージでとらえることは、ネパール語学習の助けになることでしょう。
さらに、「हुनु」が「なる」という意味を持つのも、英語の「be」と共通するポイントですね。ただし、「हुनु」の意味する「なる」は、「be」というよりも「become」に対応するくらいはっきりしています。
「हुनु」と「be」の相違点
とはいえ、ネパール語と英語では言語が違うわけですから、当然相違点もあります。まず、なんとしても誤解をさけていただきたいのは、英語の「be」動詞の3つの変化は主語に対応しているのに対し、ネパール語動詞「हुनु」の上記3つの変化は、意味の違いによるということです。これに加えて、主語に応じた変化が「हो」系、「छ」系、「हुन्छ」系それぞれに生じます。
冒頭で述べたとおり、意味や用法についてのこれ以上の詳しい解説は別の機会に譲るとしまして、本解説では現在形の「形」に的を絞って解説していきます。(意味・用法を把握する点でも、「be」との比較は役に立ちます。)
「हो」系の、主語に応じた変化
まずは、一覧表をご覧ください。「हो」系と呼んではいますが、これは三単現低尊敬の形であることを意識なさってください。
ネパール語動詞「हुनु」の主語に応じた変化(「हो」系) | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 対応する「हो」の形 |
---|---|---|---|---|
一人称 | 単数 | ー | म | हुँ |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | हौँ | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | हुनुहुन्छ |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | हुनुहुन्छ | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | हौ | |
単数 | 最低 | तँ | होस् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | हुनुहुन्छ |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | हुन् | |
複数 | 低 | यी/ ती | हुन् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | हो |
主語とセットで何度も口ずさみ、リズムを覚えてしまうしかありません。その際に注意したいのは、「हुँ」の発音と「हुन्」の発音の違いです。「हुँ」は鼻音ですが、「हुन्」はそうではありません。カタカタ表記(カタカタ発音)をしてしまうと、両方とも「フン」となってしまい、間違いの原因となります。「हुन्」の「न्」部分も、鼻に抜ける「ङ」の母音のない子音ではなく、「न」の母音のない子音です。日本語の「ン」という音は口を閉じたまま発音できますが、その音は「ङ्」に近くなります。
このあたりまでネパール語学習が進んできたところで、一度発音や文字の読み方をおさらいしてみるのも有益でしょう。
【文字の読み方、発音の仕方の復習には、以下の記事が特にお役に立ちます】
ネパール語の文字 | Webマガジン ニュース・オブ・アジア
ネパール語の文字の読み方(子音字) | Webマガジン ニュース・オブ・アジア
「छ」系の、主語に応じた変化
まずは、一覧表をご覧ください。「छ」系と呼んではいますが、これは三単現低尊敬の形であることを意識なさってください。
ネパール語動詞「हुनु」の主語に応じた変化(「छ」系) | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 対応する「छ」の形 |
---|---|---|---|---|
一人称 | 単数 | ー | म | छु |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | छौँ | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | हुनुहुन्छ |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | हुनुहुन्छ | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | छौ | |
単数 | 最低 | तँ | छस् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | हुनुहुन्छ |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | छन् | |
複数 | 低 | यी/ ती | छन् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | छ |
「हो」系と見比べてみると、尊敬度が高い主語の場合はどちらも共通して「हुनुहुन्छ」であることが分かります。やはり、元は同じ単語「हुनु」であるわけです。
発音としては、「छौ」と「छौँ」の違いをしっかり意識しておきましょう。「छौँ」は鼻音です。「チョン」とカタカタ発音しないで、しっかり鼻に空気を通す発音をしましょう。
【チャンドラビンドゥ(ँ)の発音については、こちらの記事で解説されています】
「हुन्छ」系の、主語に応じた変化
まずは、一覧表をご覧ください。ここでもやはり、「हुन्छ」系と呼んではいますが、これは三単現低尊敬の形であることを意識なさってください。
ただ、一つだけ注意点を。先に挙げた「हुनु」の3つの現在形の表には「3.『許可』」という意味も載っています。この「許可」を意味する単語は常に「हुन्छ」です。これは、主語が(省略されていることもあるとはいえ、)「~すること」という名詞句の形をとるからです。
ネパール語動詞「हुनु」の主語に応じた変化(「हुन्छ」系) | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 対応する「हुन्छ」の形 |
---|---|---|---|---|
一人称 | 単数 | ー | म | हुन्छु |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | हुन्छौँ | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | हुनुहुन्छ |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | हुनुहुन्छ | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | हुन्छौ | |
単数 | 最低 | तँ | हुन्छस् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | हुनुहुन्छ |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | हुन्छन् | |
複数 | 低 | यी/ ती | हुन्छन् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | हुन्छ |
お気づきのとおり、実は前方に「हुन्」が付いただけで、あとは全て「छ」系と同じですね。前回から「छ」系をリズムで覚えてこられた方にとっては、これもとても覚えやすいかと思います。
リズムを意識していくと、変化の共通点に気が付く
繰り返しになりますが、この変化を身に付けるコツは、主語とセットで何度も何度もブツブツとつぶやき続けることです。
म हुँ। म हुँ। म हुँ। ………
म छु। म छु। म छु।……..
म हुन्छु। म हुन्छु। म हुन्छु।………
といった具合です。
これを、次は「हामी」について行っていきます。
हामी हौँ। हामी हौँ। हमाी हौँ।…….
हामी छौँ। हामी छौँ। हामी छौँ।……..
हामी हुन्छौँ। हामी हुन्छौँ। हामी हुन्छौँ।……….
続いて、「हजुर」そして「तपाईं」と続けていきます。
すると、お気づきになると思います。やはり、「हो」系であれ、「छ」系、「हुन्छ」系であれ、いずれの場合にも母音が共通しています。共通部分(母音と末尾の一文字)だけを取り出して、以下の表のようにまとめることができるでしょう。
主語ごとに変化するネパール語動詞の共通部分 | |
主語 | 「हुनु」現在形末尾の共通部分 |
---|---|
म | ु (ुँ) |
हामी | ौँ |
हजुर/ हजुरहरू | हुनुहुन्छ |
तपाईं/ तपाईंहरू | हुनुहुन्छ |
तिमी/ तिमीहरू | ौ |
तँ | अस् |
यिनी/ तिनी/ ऊनी/ यिनीहरू/ तिनीहरू/ ऊनीहरू | अन् |
यी/ ती/ ऊ | अन् |
यो/ त्यो / ऊ | अ |
まとめ
今回は、ネパール語の”be動詞”とも言うべき「हुनु」の現在形が主語に応じてどう変化するかを解説してきました。いつの間にか「フヌフヌ(ふむふむ)、なるほどね」「ふ~ぬ、そういうことか~」と口走ってしまっていませんでしたか?とにかく何度も繰り返して、リズムを自分に叩き込みましょう。
では、まとめです。
- 「हुनु」の幾つかの意味は英語の「be」に似ている。それは、「名詞”です”」「状態」、そして「存在」。
- 「हुनु」は、「なる」という意味も持っている。
- 「हुनु」の現在形が3系統に分かれるのは、主語に応じてではなく、意味の違いから
- 主語に応じた変化は、「हो」系、「छ」系、「हुन्छ」 系すべてに共通してる音をリズムで覚えよう
次回は、主語に応じた動詞の変化から一旦はずれて、「हुनु」の意味と用法を徹底解説していきます。
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