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ネパール語の背景を知ろう

ネパールのヒマラヤ山脈空撮
(ヒマラヤ山脈)

今日は、ステップ0。最初の一歩を踏み出す前段階

これから少しずつ、ネパール語解説をしていきたいと思います。今日は、概説です。「小難しいことはいいから、すぐにネパール語学習を始めたい!」という意欲のある方もおられると思いますが、ネパール語学習の方向付けのためにとても役立つ情報だと思いますので、お付き合いいただければ幸いです。

まずは、ネパール語にいく前に、ちょっとだけ世界の言語事情に目を向けてみましょう。

世界には約7,000の言語があると言われています。凄まじい数ですね。それほどの数ですから、もちろん名前も聞いたことのない言語もたくさんあります。一つの国で、いくつもの言語が話されている、ということもよくあります。

このページにたどり着いておられる方は、かなり言語学習に関心の高い方だと思いますので、ちょっとクイズを出してみたいと思います。

言語クイズ

名前がちょっと面白い、ワライ語(Waray)。どこの国の言葉でしょうか?

分からな過ぎて笑うしかない、なんていうのはなしですよ!

では、イロカノ語(Irocano)は?

これならちょっと、分かる方もいるかもしれませんね。分かる方も、いるかいの?(イロぅカぃノぉ?)

・・・。

気を取り直して、セブアノ語(Cebuano)はどうでしょう?

そう、ピンっと来た方もおられるかと思いますが、観光地として有名なあの島の名前とつながりがありますね。セブが付く、あの島です。

では、タガログ語(Tagalog)はいかがでしょうか?この言語を基にしてフィリピノ語が作られたそうです。

もうお分かりですね。これらはすべて、一つの国フィリピンで話されている言語です。これらと共に、英語もよく話されているそうですから、「フィリピン人=フィリピノ語」と決めつけるわけにはいかないことが分かります。

一国一言語ではない、という事情

むしろ、世界ではこのような国の方が多いのではないかと思います。多民族国家であれば、それぞれの民族語があったり、さらに地方ごとに違う言語が使われていたりするわけですから、同じ国の中でも意思の疎通が難しくなります。それで、公用語や共通語という言語が決められてゆきます。でも、公用語や共通語として選ばれた言語をもともと母語としていた人と、家では別の言語を話していて学校で公用語を勉強したに過ぎない人では、当然、理解度に大きな違いが出てきます。

私たち合同会社アジア・パブリック・インフォメーションが得意としているネパール語(Nepali)も、そういう事情のもとにあります。

ネパール語は、現在ネパール全土で通じる公用語ですが、それを母語とする人は全人口の44.64%しかいません。過半数の人たちは、他の言語を母語としており、ネパール語は公用語として用いている、ということです。

ネパール国内で話者数の多い他の言語としては、マイティリ語(Maithili)、マガル語(Magar)、タマン語(Tamang)、ネワール語(Newari)などがあります。つまり、これらの言語を母語とする人たちにとっては、ネパール語は第二言語でしかなく、心と直結した言語ではありません。頭を使って話す言語です。

ネパール語の発音にもそれぞれの母語の影響がみられます。例えば、ネワール族の人たちは、तとटの違いが発音できません。日本語のカタカナで表記するとしたら両方「タ」ですから、これは日本人にとって心強い話です。(この違いを意識しなくてよいと言っているのではありません。)

さらに、世代によってもネパール語力は大きく異なります。元々はネパール語を母語としていた民族に属する人でも、ある程度経済的に余裕があり教育熱が高い家庭で育った子供たちは、「国語」の授業を除くすべての授業を英語で行っている学校(Boarding Schoolと言われる)に通っている子も少なくありません。すると、彼ら彼女らにとってもネパール語は第二言語、あるいは「親の言語」という位置づけになっていることがあります。全体の中ではまだまだ少数ではありますが、彼ら彼女らにとっての第一言語は、英語なのです。

ヒンディー語(Hindi)の存在

ネパールにおいては、ヒンディー語の存在も忘れてはなりません。ヒンディー語は、当然その名のとおり、インドで話されている言葉です。

ネパールは、東、西、南の三方で国境をインドと接していますので、歴史的・文化的にもインドとのつながりがとても深い国です。民族によっては、大多数はインド側にいる、ということもあります。

また、言語的にもネパール語とヒンディー語はとても近い存在です。両方ともサンスクリット語から派生した言語であり、同じデバナガリ文字を使用しています。共通する単語もあります。

これらの事情に加えて、テレビの存在が大きな影響力を持っています。ネパールではインドのテレビ番組を視聴できるようになっており、多くのアニメ番組はヒンディー語で放送されています。そのため、子供たちは小さな時から自然とヒンディー語を聞きながら育つことになり、みんなヒンディー語が理解できるようになります。(もっとも、話せるようになるかどうかはまた別の話です。「聞く」と「話す」は全く別々の能力なのですが、この点についてはまたいつかこのコーナーにて書きたいと思います。)特に、インド国境付近である、ネパール南部のタライ平野で生まれ育った人は、インドーネパール間での人の往来が多いこともあり、ヒンディー語理解が進んでいます。

ネパール語は果たしてどこの言語か

このように、ネパール語を取り巻く環境は複雑です。さらに、ネパール語そのものも、実は東と西では異なっています。当然、方言があるわけです。

ネパール東部の有力都市であるビラトナガルという街の人たちは、その地域がネパール語の発祥の地であり、「純粋なネパール語」とはその地域のネパール語の事だ、と信じているそうです。

しかし、ネパール中西部の山岳地帯にあるムグ郡(Mugu District)出身者は、ネパール語はムグから各地に広まっていったと考えているそうです。

こういう事情ですので、何が標準のネパール語か、というのを定めるのは非常に難しいといえます。

では、どうすればいいのでしょうか。

ネパール語を学習する外国人にとっては、やはりまずは首都のカトマンズで話されているネパール語を基準に勉強してゆくと良いでしょう。首都にはネパール各地から人々が集まってきていますので、まずはそこで通じるネパール語を習得できれば、その後で会うほとんどすべてのネパール人とコミュニケーションが取れます。

でも、カトマンズ盆地は元々ネワール族が多く住んでいた場所ですので、今でもネワール語を母語とするネワール人が大勢住んでいます。彼らの話すネパール語は、少しネワール語発音の影響を受けているということを頭においておいてください。また、地理的には、カトマンズはネパールの中央やや東側です。そのことを覚えておくと、ネパール西部出身者と接する時に、彼らの話を聞き取るのが難しく感じても、落ち込まずに済むでしょう。(きっと、東京で日本語を勉強した外国人は関西弁に戸惑うことでしょう。逆もまたしかり、です。)

まとめ

それでは、今日のまとめです。

・ネパール語は多民族・多言語国家で話されている言語である
・ヒンディー語の影響も受けやすい環境にある
・東西で方言もあり、どちらが「標準」なのかは難しいところである

というわけで…

・ネパール語学習者は、間違いや「変なネパール語を話しているんではないか?」と不安をあまり抱えずに勉強ができる
・ネパール人が文法的に少し変わったネパール語を話していても、「あれ?私が勉強したことと違う!」と焦らないで済む

嬉しいですよね!?

それでは、ネパール語を楽しく学んでいきましょう!

(※当サイトを運営する合同会社アジア・パブリック・インフォメーションは、ネパール語翻訳のご依頼も承っております。詳しくは、弊社公式ホームページをご覧ください。)

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