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ネパール語の主語②—「レ」や倒置法、意味上の主語

合同会社アジア・パブリック・インフォメーションがお届けする本気でネパール語を習得したい人のための解説ページ。前回と今回のテーマは、「主語」です。前回はネパール語の主語の基本的な事柄を解説しました。ポイントは、話者(書き手)が抱いている尊敬の度合いが主語選びに表れる、ということでした。そして主語選びは動詞の変化にも影響するため、ネパール語ではとても大切な要素でしたね。

でも、ネパール語の主語に関して押さえないといけないポイントはまだまだありますので、一つずつ解説していきます。このページでは、主語につく「ले」、意味上の主語、頻出する倒置法、主語のない文について順に解説してあります。

ネパール語特有!主語につく「ले」とは何か

前回も少し触れていますが、ネパール語には「てにをは」といった助詞は存在しませんので、日本語に訳す時には自分で補って考える必要があります。

ですが、少しネパール語をかじったことのある方の中には、「あれれ?主語の後につく『ले』は『は』じゃないのかな?」と不思議に思われる方がいるかも知れません。

結論から言えば、違います。「ले」は確かに主語にくっついて使用されることがよくありますが、日本語の「は」や「が」ではありません。

主語に「ले」が付くのは、動詞が他動詞である場合です。自動詞の主語には「ले」はつきません。従って、以下のような表現は、間違いとなります。ネイティブスピーカーでこう言い間違う人に出会うことはまずないでしょう。

तपाईंले सन्चै हुनुहुन्छ?

「तपाईं सन्चै हुनुहुन्छ?」と、「ले」を付けないのが正解ですね。

とはいえ、他動詞にかかる主語にはとにかく「ले」を付ければ良いのか、と言えば、そうでもありません。「ले」が用いられるのは、主語を強調したい場合です。そして、どういうわけか、現在形の時よりも、過去形(完了形)のときの方が頻繁に「ले」が用いられ、それにも関わらず過去形(完了形)の場合には“強調”の意味合いがかなり薄れてきます。ここは、とにかく多くのネパール語に触れて感覚を身に着けていくしかない分野でもあります。

ただ、基本は“強調”する働きがあるということを意識しておけば、「म」と「तँ」の後に「ले」が付いた時に、単に「मले」「तँले」とならずに「मैले」「तैँले」という形になることにも納得がいきやすいのではないかな、と思います。(※「मै」は「म」の、「तैँ」は「तँ」の強調形です。)

自動詞と他動詞の見分け方

日本人にとって普段意識することがないために、いざ外国語学習を始めると馴染みにくく感じるものの一つに、「自動詞」と「他動詞」の区別があります。残念ながら(?)、ネパール語でもこれを区別することを避けては通れません。

ネパール語でこの二つを見分けるポイントは、文脈なくその動詞だけを言われた時に、「何を?」と尋ねたくなるかどうか、です。

例えば、「食べます」と言われたら、「何を?」と思いますよね?「勉強します」と言われても、「何を?」と尋ねたくなります。「やめます」と言われれも、やはり「何を?」となりますね。これらは、他動詞です

一方、「行きます。」と言われたら、どうでしょうか?「どこへ?」と尋ねたくなりますね。「何を?」ではありません。「なります。」と言われたら、「何に?」であって、「何を?」ではありません。「怒った」と言われたら、「どうして?」「何に?」ですね。これらは自動詞です。(「何をそんなに怒ってるの?」と尋ねる時がありますが、それは「どうして」という意味ですね。)

明らかな自動詞「हुनु」

ひとつだけ、明白に自動詞であるものがあります。初めのうちは、この動詞を使う時には絶対に主語に「ले」を付けない、とだけ覚えていても、多くの間違いを回避できます。

それは、英語のbe動詞にあたる、「हुनु」です。ネパール語の超超超頻出単語です。先ほどの例にもでてきましたね。日本の「です/ます」に該当します。いきなり「です。」と言われて、「何を?」と尋ねることはまずないですね。これは、自動詞です。もっとも、次回の解説に掲載しますが、「हुनु」は、「छ」系統、「हो」系統、「हुन्छ」系統の3種類に変化します。それぞれに時制と、尊敬度の違いが出てきます。いずれにしても、単独の「हुनु」※1が動詞の場合には、主語に「ले」をつけない!覚えておきましょう※2

(※1 “単独の「हुनु」”としているのは、完了形表現においては、「हुनु」がもう一つの動詞とセットで用いられるためです。その場合の主語に「ले」が付くかどうかは、セットになっている動詞が他動詞かどうかで決まります。)

(※2 「तपाईंले हो नि।」といったように、見かけ上、主語に「ले」が付いている時がありますが、この場合の「तपाईंले」は主語ではありません。この「ले」は「理由」を表わす「ले」であり、訳すと「あなたのおかげですよ。」「あなたのせいですよね。」、あるいは文脈によっては途中に他動詞が省略されていて「あなたがやるんですよ」などといった意味になります。)

ネパールの風景写真 バラ郡ニズガード
(ネパールの風景。撮影=2020年11月、バラ郡ニズガード市にて)

ネパール語では、目的語が主語になることもある(~लाई,意味上の主語)

ネパール語では、目的語が主語になることもあります。実例を見た方が分かりやすいですので、下の文をご覧ください。

例)मलाई सन्चो छैन। (体調がよくありません。)

これをもう少し字義的に訳すと、「私は元気がありません。」となります。

主語は「私は」に該当する「मलाई」であるように見えます。しかし、これを完全に字義訳すると以下のとおりになります。

मलाई (私には) सन्चो (元気であること) छैन(ない)।

文法上は、「सन्चो」が主語ですね。ですが、「मलाई」が意味上の主語になっていることが分かります。「लाई」は目的語を強調する語で、「~に」を意味することが多い頻出単語です。

これと関係して、主語のない文についても押さえましょう。

ネパール語の、主語のない文(「यसतो पनि हुन्छ र?」など)

ネパール語では、主語が省略されていることもあります。ネイティブの話し手は、省略されていることさえ意識していないことが多いことでしょう。

例えば、「यसतो पनि हुन्छ र ?」といった文があります。意味は、「こんなのあり?」「こんなことでいいのか?」などいった感じになります。字義訳を確認しましょう。

例)यस्तो(このような) पनि(も) हुन्छ र (あるのか)?

主語はどれでしょうか?

ないですね。「यस्तो(このような)」の後に、人だったり、物だったり、態度だったり、状況だったり、様々なものが入り得ます。ですが、省略されています。

同じようなことは、次の文でも起きています。

例)तपाईंलाई कस्तो लाग्यो? (どう思いましたか?)

字義訳は、こうです。

字義訳)तपाईंलाई(あなたに) कस्तो(どのような) लाग्यो(くっつきましたか)?

このように、主語が省略されていることもよくあります。

ネパール語では、倒置法が結構頻繁に使われる

ネパール語の主語について覚えておきたいもう一つのことは、動詞の位置と主語の位置が入れ替わる“倒置法”が結構頻繁に用いられる、ということです。

これは、文法上の主語でも、意味上の主語でも共通しています。

例えば、、、

मैले भनेँ नि!

という文があります。「(私は)言ったでしょ!」という意味です。(※ここでの「नि」は、日本語で念押しに使う「ね」と同じような意味合いです。)

これを、

भनेँ नि मैले!

とすることができますし、実際によく使用されます。

では、この場合、強意はどちらに置かれるのでしょうか。「言った」という事実(動詞)でしょうか。「私が」という主語でしょうか。

「言った」という事実(動詞)の方です。伝えたいこと(強調したいこと)を先に発し、その後に主語を言い添える、という感覚です。

主語が省略されることもあります。これは、動詞の形から主語が分かるネパール語の特性でもあります。とはいえ、日本語と比較すれば、主語がきちんと発音されることが圧倒的に多いと感じます。

意味上の主語でも倒置されることがあります。例えば、先ほどの例文「मलाई सन्चो छैन।」も以下のように倒置できます。

例)सन्चो छैन मलाई।

この場合も、強調されているのは「सन्चो छैन (元気がない)」の方です。

実際の発音時の口調と併せて倒置法まで完全に使いこなせるようになれば、ネイティブの気持ちを表現できるネパール語レベルに到達してきたと言えるでしょう。

まとめ

では、今回のまとめです。ネパール語の主語にまつわる話をマスターしましょう。

  • 「ले」≠「は/が」
  • 「ले」が付くのは、その主語がかかる動詞が他動詞のときのみ
  • 現在形動詞にかかる主語につく「ले」は、主語を強調する働きをする
  • 過去形(完了形)動詞にかかる主語につく「ले」は、それほど“強調”ではない
  • 単独の「हुनु」は、自動詞。主語に「ले」はつかない
  • 「लाई」がついた目的語が意味上の主語になっていることもある
  • 主語のない文も存在する
  • 倒置法も頻出。主語より先に発した動詞に強調が置かれている

次回は、主語に応じた動詞の変化を一気に解説していきます。

(※当サイトを運営する合同会社アジア・パブリック・インフォメーションは、ネパール語翻訳のご依頼も承っております。詳しくは、弊社公式ホームページをご覧ください。)

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