
合同会社アジア・パブリック・インフォメーションがお届けする本気でネパール語を習得したい人のための解説ページ。今回は、ネパール語の推量表現についてです。推量表現とはもちろん「~だろう」や「多分」といった表現ですが、ネパール語でもバリエーションが幾つかあります。それぞれの表現の推量の度合いの強さや、「सायद」や「होला」の用法など、正確に理解しましょう。今回はまず、推量形の基本を解説していきます。コミュニケーションの深度が一気に深まります。
まず理解したい「होला」
ネパール語で推量表現といえば、何はともあれまずおさえないければいけないのは、「होला」です。何かを言った後にこの単語を付けたすだけで、「だろう」「多分」という意味を付すことができます。
本当に、簡単です。例えば、「म पनि आउँछु।」と言えば「私も行きます。」ですが、「म पनि आउँछु होला।」と言えば、「多分私も行きます。」となります。「यो मीठो छ।」と言えば「これは美味しいです。」ですが、「यो मीठो छ होला।」と言えば、「これは美味しいだろう。」となります。
勘のいい方はピンと来たかも知れませんが、この「होला」は「हुनु」の変化形です。もっと言えば、主語が三人称単数で尊敬度が低い場合の形が推量形になったものです。この場合の断定の形は「हो」でしたね。これに推量を表わす「ला」がついたものが「होला」です。
文全体を肯定して強調する「हो」
ここで一つ解説しておきたい「हो」の用法があります。それは、「文全体を肯定して強調する」というものです。例えば、前述の例文「यो मीठो छ।」。これの最後に「हो」を付けて「यो मीठो छ हो।」ということがります。これは、直訳すると「これはおいしいですです。」となってしまって日本語的には変ですが、ネパール語では自然な表現です。「यो मीठो छ」という部分を改めて肯定(あるいは、自ら確認)することによって強調している表現です。自然な日本語としては「これは本当に美味しいです。」「これは美味しいですね。」といった感じになります。
「यो मीठो छ हो?」と疑問文にすれば、相手に念を押しながら尋ねている表現になります。
ここまでくれば、文末に「हो」の推量形である「होला」が来てどうしてあらゆる文が推量表現になるのかが理解できますね。文全体に対して、「होला」と言っているわけです。
推量形「होला」の主語に応じた変化表
ということは、やはり主語ごとに変化が生じます。これまでに習得した変化と共通点がありますので、ここまでくれば馴染みやすくなっているかも知れません。以下のとおりです。
ネパール語動詞「हुनु」の主語に応じた推量形変化 | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 対応する「हुनु」の形 |
---|---|---|---|---|
一人称 | 単数 | ー | म | होऊँला |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | होऔँला | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | हुनुहोला |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | हुनुहोला | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | हौला | |
単数 | 最低 | तँ | होलास् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | हुनुहोला |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | होलान् | |
複数 | 低 | यी/ ती | होलान् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | होला |
すこしだけこれまでと異なるのは、主語が「म」の時と「हामी」の時ですね。「हुँला」とか「हौँला」となってくれればパターンどおりで覚えやすい気もしますが、そうなってはいません。「हो」の後にパターンどおりの「ऊँ」の音や「औँ」の音がきます。
他の動詞がなく「होला」が単独で使われている文
繰り返しになりますが、「होला」は「हुनु」の推量形です。ということは、断定表現であれば「हो」や「छ」、「हुन्छ」で表される事柄を推定表現で意味することができます。言い換えれば、他の動詞を伴うことなく、「होला」単独で文の動詞としてきちんと機能します。「होला」そのものに意味があるからです。
例えば、「यो कुरा साँचो होला?」という文のは「この話は本当だろうか」という意味です。断定表現でしたら「यो कुरा साँचो हो।」となります。
「तिनीहरू पनि त्यहाँ होलान्।」という文は、「彼らもそこにいるだろう。」という意味です。断定表現でしたら「तिनीहरू पनि त्यहाँ छन्।」ですね。
また、「पछि यस्तो होला कि?」は「後でこうなるだろうか」という意味で、断定表現であれば「पछि यस्तो हुन्छ।」です。
他の動詞を推量形にする
前述のとおり、なんでもかんでも最後に「होला」を付ければ推量表現になりますが、これだけだというわけではありません。「हो」が動詞「हुनु」の変化形であるのと同じように、他の動詞にもそれぞれの推量形が存在します。
とはいえ、基本的には、他の動詞で「छ」になっていた部分が「ला」に変わるだけです。そういうわけで動詞の組成ごとの現在形の変化パターンに共通している部分が多くなっています。異なっているのは異なっているのは「म」と「हामी」に関する部分ですね。これは次のシリーズで解説する願望形と関係する部分なので、詳細はそちらに譲りますが、「ला」が「ला」の形のままなのは記憶の助けになりますね。
ただし、動詞原形の「नु」の前が「आ」や「इ」となっている動詞の場合、さらにパターンが分かれますし、その中でもさらに、「दिनु(与える)」と「लिनु(得る)」は例外的なので注意が必要です。どちらも文章においても会話においても超頻出単語です。
パターン①:原形の「नु」の前が母音「आ」
最初のパターンは、原形の「नु」の前が、母音「आ」となっているものです。実際の表記の中では母音記号として登場します。例えば、「खानु」(食べる)や「जानु(行く)」があります。
この場合は、「नु」の部分の母音を落として、その後ろに各主語に応じた「ला」の変化形を付けます。断定形の場合は「न」が「न्」となって残りましたが、推量形の場合は完全に消失します。ただし、主語の尊敬度が高い時はやはり原形が残ります。
超頻出の「खानु」を例に一覧表にしていますので、ご覧ください。
ネパール語動詞の推量形変化パターン①(खानु) | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 動詞「खानु」の対応する形 |
一人称 | 単数 | ー | म | खाऊँला |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | खाऔँला | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | खानुहोला |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | खानुहोला | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | खाऔला | |
単数 | 最低 | तँ | खालास् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | खानुहोला |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | खालान् | |
複数 | 低 | यी/ ती | खालान् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | खाला |
パターン②:原形の「नु」の前が母音「इ」
次のパターンは、原形の「नु」の前が、母音「इ」となっているものです。実際の表記の中では母音記号として登場します。例えば、「हाल्लिनु」(揺れる)、「सिद्धिनु」(終わる)などがあります。
この場合は、「नु」の部分が「ए」に変わります。その後、各主語に応じた「ला」の変化形を付けます。断定形の場合は「न」が「न्」となって残りましたが、推量形の場合は「ए」に置き換わります。とはいえ、主語が「तिमी」の場合は別です。また、主語の尊敬度が高い時はやはり原形が残ります。
そして、主語が「म」や「हामी」では形式上はこのパターンでも存在していても、単語の意味によっては実際の会話ではほとんど使用されない場合もあります。
「हल्लिनु」を例に一覧表にしていますので、ご覧ください。
ネパール語動詞の推量形変化パターン②(हल्लिनु) | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 動詞「हल्लिनु」の対応する形 |
一人称 | 単数 | ー | म | हल्लिऊँला |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | हल्लिऔँला | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | हल्लिनुहोला |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | हल्लिनुहोला | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | हल्लिऔला | |
単数 | 最低 | तँ | हल्लिएलास् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | हल्लिनुहोला |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | हल्लिएलान् | |
複数 | 低 | यी/ ती | हल्लिएलान् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | हल्लिएला |
「दिनु」 と「लिनु」について
「दिनु」「लिनु」では、一部で「दि」が「दे」に、「लि」が「ले」に変わります。これは発音のしやすさから来たものと思われます。「イ」の音から「ア」に行くよりも「エ」の音から「ア」の音に行く方が発音しやすいかと思いますので、ご自身でも声に出して試してみてください。
ネパール語動詞「दिनु」の主語に応じた推量形変化 | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 対応する「दिनु」の形 |
---|---|---|---|---|
一人称 | 単数 | ー | म | दिऊँला |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | दिऔँला | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | दिनुहोला |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | दिनुहोला | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | दिऔला | |
単数 | 最低 | तँ | देलास् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | दिनुहोला |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | देलान् | |
複数 | 低 | यी/ ती | देलान् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | देला |
ネパール語動詞「लिनु」の主語に応じた推量形変化 | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 対応する「लिनु」の形 |
---|---|---|---|---|
一人称 | 単数 | ー | म | लिऊँला |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | लिऔँला | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | लिनुहोला |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | लिनुहोला | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | लिऔला | |
単数 | 最低 | तँ | लिलास् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | लिनुहोला |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | लेलान् | |
複数 | 低 | यी/ ती | लेलान् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | लेला |
パターン③:原形の「नु」の前が母音の無い子音字
次のパターンは、「गर्नु」(する)、「मिल्नु」(合わさる、適合する)、「हाँस्नु」(笑う)など、原形の「नु」の前が母音の無い子音字の場合です。
この場合は、「नु」を消去し、その位置に、各主語に対応する「ला」の変化形を取り付けます。この場合も、尊敬度が高い主語では原形が残ります。
超頻出の「गर्नु」を例に一覧表をご確認ください。
ネパール語動詞の推量形変化パターン③(गर्नु) | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 動詞「गर्नु」の対応する形 |
一人称 | 単数 | ー | म | गरूँला |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | गरौँला | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | गर्नुहोला |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | गर्नुहोला | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | गरौला | |
単数 | 最低 | तँ | गर्लास् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | गर्नुहोला |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | गर्लान् | |
複数 | 低 | यी/ ती | गर्लान् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | गर्ला |
パターン④:原形の「नु」の前が母音「अ」
次のパターンは、原形の「नु」の前が、母音「अ」の単語です。「अ」の母音記号は存在せず、子音字の中に隠れていますので注意が必要ですね。例えば、「सुम्पनु」(委ねる)、「पर्खनु」(待つ)、「फर्कनु」(戻る)などといった動詞です。
このパターンでは、「नु」を消去した上で、その前の文字を一旦子音化して、それぞれの主語に対応する母音と「ला」を付ける、というものです。少し複雑です。この場合も、尊敬度が高い主語では原形が残ります。
やはりよく用いられる単語である「फर्कनु」を例に一覧表を掲載します。
ネパール語動詞の推量形変化パターン④(फर्कनु) | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 動詞「फर्कनु」の対応する形 |
一人称 | 単数 | ー | म | फर्कूँला |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | फर्कौँला | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | फर्कनुहोला |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | फर्कनुहुोला | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | फर्कौला | |
単数 | 最低 | तँ | फर्केलास् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | फर्कनुहुोला |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | फर्केलान् | |
複数 | 低 | यी/ ती | फर्केलान् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | फर्केला |
パターン⑤:原形の「नु」の前が「आउ」の音
このパターンは、例えば、「आउनु」(来る)、「लगाउनु」(付ける、着る)、「गराउनु」(させる)などのような超頻出単語によく見られます。この場合は、主語に応じて「नु」または「उनु」を取り外し、その後、各主語に対応する「ला」の変化形を取り付けます。この場合も、尊敬度が高い主語では原形が残ります。
「आउनु」を例にとった一覧表をご覧ください。
ネパール語動詞の推量形変化パターン⑤(आउनु) | ||||
人称 | 単複 | 尊敬度 | 該当する主語 | 動詞「आउनु」の対応する形 |
一人称 | 単数 | ー | म | आऊँला |
複数 | ー | हामी/ हामीहरू | आऔँला | |
二人称 | 単数・複数 | 最高 | हजुर/ हजुरहरू | आउनुहोला |
単数・複数 | 中・高 | तपाईं/ तपाईंहरू | आउनुहोला | |
単数・複数 | 低 | तिमी/तिमीहरू | आऔला | |
単数 | 最低 | तँ | आउलास् / आलास् | |
三人称 | 単数・複数 | 高 | यहाँ/ यहाँहरू/ उहाँ/ उहाँहरू | आउनुहोला |
単数・複数 | 中 | यिनी/ यिनीहरू/ तिनी/ तिनीहरू/ उनी/ उनीहरू | आउलान् | |
複数 | 低 | यी/ ती | आउलान् | |
単数 | 低 | यो/ त्यो/ ऊ | आउला |
否定形のつくり方
推定形の否定形とは「~ないだろう」という表現です。
つくり方はとても簡単で、推量形の動詞の最初に「न」を付けるだけです。これは「हुनु」でも他の動詞でも共通しています。「होला」を例にして表にすると以下のとおりになります。
過去時制や完了形、未来時制
さて、推量形そのももには時制の要素はありません。それで、時制に応じて推定形が変化することはありません。
過去時制や完了形、未来時制に関して推量表現を使いたい場合には、文末に「होला」を付ける仕方が用いられます。
「उहाँ त्यहाँ पुगिसक्नुभयो होला।」(あの方はそこにもう到着しただろう。)
「उहाँ त्यहाँ पुग्नुभएको छ होला」(あの方はそこに到着したことがあるだろう。)
「उहाँ त्यहाँ पुग्नुहुनेछ होला।」(あの方はそこに到着されるだろう。)
といった具合です。
なお、完了形に関しては、最後の「छ」や「हो」を「होला」に変えることもできます。その場合は、「उहाँ त्यहाँ पुग्नुभएको होला।」となります。
まとめ
では、まとめです。
- とにかく文末に「होला」を付ければ推量形に
- それは文全体を対象として「होला」と言っている
- 「होला」単独でも文末動詞として成り立つ
- その場合は「हो」「छ」「हुन्छ」すべての意味に対応する
- 「होला」の主語に応じた変化は断定形とほぼ同じ。
- 例外は「म」「हामी」が主語の場合
- 他の動詞にもやっぱり推量形が存在します。
- 基本的には断定形の変化と同じ。でも「खानु」「दिनु」「लिनु」には注意
- 否定形は単語の最初に「न」をつけるだけ
- 時制による推定形そのものの変化はなし
ところで、文末に「होला」を付けて推量形にした場合と、動詞を直接に推量形にした場合とで、推量の度合いに違いはあるのでしょうか。次回、他のバリエーションも含めて解説していきます。お楽しみに!
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