
合同会社アジア・パブリック・インフォメーションがお届けする、本気でネパール語を取得したい人のための解説ページ。今回は、完了形です。この完了形を理解すると、一気にネパール語表現の幅が広がります。では、みていきましょう。
完了形が意味するものは
学生時代の英語学習で、「現在完了」につまずいた人も多いかと思います。なにせ、「完了」という言葉になっていますが、それに対応する日本語は「○○したことがある」「(今の時点まで)ずっと続いている」だと説明されます。(実際、これらの訳に文句はないのですが、)「完了」という言葉からパッと伝わるイメージではない、というのが大きな要因の一つでしょう。その上、“現在”完了と言いながら、過去分詞なるものが登場します。過去分詞という新たな存在に対応できずにいる間にさらに追い打ちとなるは、「have」が使われるということでしょう。それまでは「have」=「持つ」だと思っていたのに、「現在完了」なるものが登場したら突然「have」の意味が変わってしまったように感じて戸惑ってしまうものです。
ネパール語の完了形は、見たまんま
それに対して、ネパール語の完了形です。当サイトでネパール語学習を続けてこられた方にとっては、とても理解しやすい形をしています。すでに得た知識で、ほぼすべてのことが網羅されています。
まずは、基本となる形を確認してみましょう。こうなっています。
「過去分詞(エコ形)」+{「हुनु」の「छ」系変化}
以下の文を例に考えてみましょう。日本語訳は、「私はネパールに行ったことがある」です。
例)म नेपालमा गएको छु।
今注目すべきなのは、動詞部分ですので、「गएको」と「छु」です。この形を見て、これが現在完了ってそりゃそうだ、と思った方はここまでの解説にかなり通じておられると言えます。
過去分詞「エコ形」が出てきていますね。過去ですので「行った」です。
そこに、「ある」という意味の「छ」が付いています。現在形ですね。「छु」となっているのは、主語が「म(私)」だからです。
「行った」+「ある」=「行ったことがある」
となります。そのままですね。そして、当サイト内でこれまで何度か触れられてきたように、ネパール語の過去分詞は実は完了を表わしていると捉えた方が良いという側面があります。「行ったことがある」というのは今行っている最中でもこれから行くのでもなく、すでに完了したことについての話題です。これを現在完了形と呼ぶことに依存はないでしょう。
ところで、完了形は「ある時点からこれまでずっと続いている状態」を表わすとも説明されます。これも、この例をとってみればよく分かります。もちろん、「行く」という動作や移動中であるという状態がずっと続いているという意味ではありません。それでも、過去に「行った」という事実は変わりようがありません。「昨日の時点まではネパールに行ったことがあったけど、今日はもうこれまでにネパールに行ったことなんてない」などということは、ないわけです。
さて、ここで一度立ち止まってみましょう。「私」はネパールからすでに戻って来ているのでしょうか、行ったままでしょうか。きっと戻って来ていますね。どうしてかと言えば、今回の主語は「私」なのですから、今もまだネパールにいる場合は「私はネパールに来ています。(आएको छु)」という表現が用いられるのが自然です。この場合は、「来たことがある」と言っているのではなく、「来ている」つまり、過去の時点に「来て」から今に至るまでずっとその状態が続いているということになります。
でも、同じ「आएको छु」でも、「以前にも(पहिला पनि)」を付けて「म पहिला पनि नेपालमा आएको छु」と言えば、当然ながら、「以前にもネパールに来たことがある」という意味になります。「以前にも来てずっといる」というのは日本語的にもおかしいですよね。
やはり、完了形は「したことがある。(完了・経験)」「それ以来続いている(継続)」という二つの意味合いを持つということです。何かの動作・行為・経験について話しているのであれば、「したことがある」。何かの状態について話しているのであれば「それ以来続いている(継続)」という意味合いになります。
ネパール語の完了形、英語に比べてとてもつかみやすいのではないでしょうか。
(記事は下に続きます。)
【過去分詞についてはこちら】
高尊敬主語の場合
さて、形の上で注意が必要なのは、高尊敬の主語が用いられた場合にそれが表れる位置です。ネパール語では、過去分詞の方が尊敬形を取ります。最後の「छ」ではありません。つまり、「彼はお食事中です」という表現は「उहाँ खाना खाइरहेको हुनुहुन्छ」とはなりません。「खाइरहनुभएको छ」となります。
日本語は、文末を「だ/である」から「です/ます」に変えることで丁寧語となるため、それにひっぱられてネパール語でも最後の「छ」を変えてしまわないよう気を付けましょう。
複数形主語の場合
さて、実は過去分詞(エコ形)は、「エカ(एका)形」を取ることがあります。もっと厳密には最後の「को」が「का」に変化しています。この場合の主語は「तिमी」、「हामी」もしくは「यिनीहरू」、「तिनीहरू」、「उनीहरू」などと言った、複数形です。対応する動詞「हुनु」のछ系変化は、「छौ」「 छौँ 」「छन्」です。 「私たちはネパールに行ったことがある」という文は、「हामी नेपालमा गएका छौँ।」となりますね。
そして、動詞の変化形が同じ「छन्」だからでしょうか、単数形であっても「यिनी」「तिनी」「उनी」は「-एका छन्」という形を取ります。やはり、ネパール語では複数形と尊敬度はつながっていると言えるでしょう。
「-एको」と「-एका」。最初は使い分けが難しく感じるかも知れませんが、実際に声に出してみると、発音のしやすさからこういった発展を遂げてきたのだろうと気づきます。「オ」の音から「छौ」「छौँ」「छन् 」と続けるには「オ」の直後に口を開かなければならないなど、少し発音しにくく感じますが、逆に「ア」からであれば順に口を閉じていくだけですので、立て続けに発音しやすいです。一方、「छु」、「छ」と「छस्」は「オ」の音からでも続けて発音するのに難しさは感じません。
過去分詞はこの他にもう一つ、「エキ(एकी)形」を取ることもありますが、これについてはまた別の記事にて解説します。
まとめ
それでは、今回のまとめです。
・ネパール語の完了形は 、「過去分詞(エコ形)」+{「हुनु」の「छ」系変化}
・見たとおりの、「過去の状態・動作・行為」が「ある」
・ネパール語の過去分詞は完了と捉えることができる
・ 尊敬度の高い主語の場合は、「-नुभएको छ」
・複数形の主語の場合は、「-एका」
完了形についての解説は、まだ完了していません。。。次回は、完了形における「छ」「हो」「हुन्छ」の使い分けや、過去完了と未来完了について解説いたします。
※10月1日、内容を一部修正、追加しました。
(※当サイトを運営する合同会社アジア・パブリック・インフォメーションは、ネパール語翻訳のご依頼も承っております。詳しくは、弊社公式ホームページをご覧ください。)