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【インドコラム】映画の年間制作本数世界一位のインド、そこに至るインド特有の事情って?

映画の年間制作本数世界一位のインド、そこに至るインド特有の事情って?

実はインドは映画年間制作本数が世界一!インドでの年間映画制作は約2000本に及び、ハリウッドや他国の倍以上の制作本数に達しています。(図1参照)それを裏付けるように「ボリウッド Bollywood」という言葉が存在します。皆さんはボリウッドをご存知ですか?アメリカの映画産業の中心地「ハリウッド」をもじってインドの映画産業の中心地「ボンベイ(ムンバイ)」のことを「ボリウッド」と呼びます。なぜそれほどまでにインドで多くの映画が制作されるのでしょうか?

1インド1,986(2016年)
2中華人民共和国(中国)874
3アメリカ合衆国(米国)660
4日本594
図1:映画の制作本数が多い国(2017年) 出典:外務省 キッズ外務省「世界いろいろ雑学ランキング」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/eiga.html

(※編集部注記:新型コロナ感染拡大を受け、筆者はこの記事をインド国外で執筆しました。この記事はインド滞在中に見聞きしたことを基に、出国後に書かれたものです。)

インド映画を観る人口が多い

単純に映画を観る人が多い国(人口の多い国)はそれだけ人口比に応じて需要が増えているようです。2021年インドは約13億人、中国は約14億人と他の国との人口の差は歴然であり、その分彼らのニーズに合った映画制作が必然的に増えていると考えられます。インドの貧困層でもカラーテレビを持っている家庭もすでに多くあります。テレビがない場合でもインドは映画館が都市ごとに多数存在していいるため入館して映画鑑賞も難しくありません。

それに加え「印僑(在外インド人、インド系移民)」は現在世界中に3210万人にも達します。(インド外務省公式サイトからの統計 http://mea.gov.in/images/attach/NRIs-and-PIOs_1.pdf) インド国外で生活していても母語の映画などのエンターテイメントを家族や個人で楽しむ人はきっと多いでしょう。

インド映画は国内にとどまらず海外にも多く配給されています。以前滞在したバングラデシュの空港やホテルでもインド映画を見かけました。インドの近隣諸国ではヒンディー語を理解できる人も多いため近隣諸国へのインド映画の配給は振興しています。

インド映画はヒンディー語だけではなく、言語ごとに制作される映画

以前にも説明した通りインドの公用語はヒンディー語です。でも多言語国家であるインドは地域や階級によってはヒンディー語がまったく理解できないといった場合もあり、ヒンディー語のみのエンターテイメントとしてのインド映画は成立しません。もちろんヒンディー語でも映画を撮りますが、インドでは州や地域の主要言語ごとに映画が制作されます。この特殊な事情によってアメリカや中国といった映画産業に特化した国より多くの映画を結果的に制作していることになります。インド映画はヒンディー語の他にもタミル語、テルグ語、カンナダ語、マラーティー語、マラヤーラム語が代表的ですが他にも多岐に渡っています。インドの各州の人口はヨーロッパ諸国の国々と変わらぬ規模ですので、各主要言語ごとのインド映画の市場規模は広大と言えます。

もしあなたが動画配信サービスを通してインド映画を観るとします。その映画の音声選択にタミル語、ヒンディー語、英語、日本語と選択肢があります。これはその映画のオリジナルの言語はタミル語で制作され、他のインド人向けにヒンディー語や英語、欧米などの英語圏向けに英語、日本向けに日本語の選択肢が設定されていることになります。

独特なインドの映画倫理事情

「全部ヒンディー語で映画を撮影して各主要言語ごとに吹き替えや字幕を入れれば済むのでは…」と思った方もいるかもしれません。多言語に加えて多文化国家でもあるインドは州や地域ごとに習慣、文化、歴史、宗教などが異なるため、ある州で制作された映画でも他の州では「内容が不適切」と評価され放映が許可されない、内容などの変更が必要と判断される場合があります。

有名な話ではインドの古来の伝記をもとに作られた映画のタイトル中に女性の名前が入っているためにタイトルの変更が求められたり、ある州ではその映画は放映禁止になり、映画の内容に怒り群衆が暴動まで起きてしまうケースもありました。

インドには映倫(映画倫理機構)にあたる中央映画認証委員会が存在していますが、実際にはそれぞれの州政府ごとにもチェックされ最終的な放映が決まります。インドは映画に限らずテレビドラマや報道番組に至るまで各州のテレビ局が現地語を使って州の人たちに向けて発信しています。同じ州の文化や言語が同じ人たちに受け入れられる映画を制作していく観点からすると確かに「言語ごとの映画制作」はインドで受け入れられる形なのかもしれません。

まとめ

これらの点を踏まえると海外映画はインドの人に受け入れられるのか疑問に思いますよね。私の印象では映画館で10作品の映画が放映されているなら8割はインド映画で2割は外国作品。やはりインドでは国内の映画が好まれ、海外からの映画はそれほどではありません。海外の作品ではヒューマンドラマやドキュメンタリーがよく放映されているイメージがあります。

インドでもコロナパンデミックによって真っ先に営業が自粛された場所の一つが映画館でした。定期的に政府から送られて来るメールにはシアターには行かないように毎回注意書きされていたのを覚えています。それでも映画離れが進むことはなく、インドでもポピュラーな動画配信サービスなどを通して映画を観るように変化していっているようです。

※このコラムは画像を含め社外コラムニストから提供されたものであり、「Webマガジン ニュース・オブ・アジア」編集部および合同会社アジア・パブリック・インフォメーションが内容の正確性・最新性を保証するものではありません。ただし、画像・文章の一部は編集部にて取得、あるいは加工、修正してある場合があります。また、コラム内で表現されている考えは当社の考えを代表しているものではありません。コラムニストの信頼性もしくは誠実さは十分に確認されておりますが、情報の利用は当サイトご利用者様ご自身の責任でお願いいたします。

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