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【インドコラム】近代インドカレーのルーツ、インドからイギリスそして世界へ カレーコラムvol.1

”インドカレー”が世界に伝わる歴史の略図
(インド生まれのカレーはイギリスに渡り、イギリスからヨーロッパ、北米、アジアそして日本へ)

近代インドカレーのルーツ、インドからイギリスそして世界へ vol.1

これまでのコラム中で「カレー」という単語をあえて使ってきましたが、インドをよく知る人から見ればインド料理に「カレー」という料理はないとお感じかもしれません。確かにその通りで、おっしゃる意味はよくわかります。インドにはなぜカレーという料理はないのか?そもそも「カレー」という呼び方はどこからきているのか?近代のインドカレーの足跡をたどってインドカレーの歴史やルーツにも迫ってみたいと思います。

(※編集部注記:新型コロナ感染拡大を受け、筆者はこの記事をインド国外で執筆しました。この記事はインド滞在中に見聞きしたことを基に、出国後に書かれたものです。)

そもそもインドではなぜカレーを食べるのか?

日本でも国民食と呼ばれるくらい人気のカレー!カレーはお母さんの味、給食の思い出の味、手軽に作れアレンジもしやすい料理といった理由があるかもしれません。インドも全く同じ理由が当てはまると思います。インドの各地域によって違いはありますがカレーは思い出の味、お母さんが作ってくれる家庭の味です。

インドの猛暑を経験した個人的な意見ではハーブやスパイスを効かせたカレーによって食欲増進や疲労回復など中国の漢方に近い考え方が浸透しているのではないかと思います。スパイスの効果によって食物の保存や殺菌、消化作用にもカレーは向いているのかもしれません。

インドに「カレー」という食べ物はない!?

現在、外国人によって「インド料理の煮込み料理」を総称して「curry、カリーまたはカレー」と呼ばれています。しかしインドの方からすればそれらの料理には独自の名称がついているためにインドでは日常的に「カレー」という単語はほとんど使われません。これから説明していきますが、世界中に「インドカレー」という名称が広まっていったためにインドでも外来語として「カレー」という表現を使います。例えばレストランのメニューなどには外国人のためにカレーと記されています。私の記事は外国の方にインドを紹介するコラムなのであえて「カレー」という語を使用しています。

私たち外国人が「カレー」と呼ぶインドの煮込み料理の代表的なもの

– コルマ ヨーグルト、生クリーム、ナッツペーストを加えて煮込んだもの

– サーグ ほうれん草などの葉野菜を香辛料と共に煮込んだもの

– サンバル 野菜を煮込んだスープ、ドーサなどの付け合わせにも欠かせない。

– ダール 日本でもダルカレーとして知られている。ひき割りにした豆を煮込んだもの。ペーストまたはスープ状になっていて、お米やチャパティとともに食べる。日本でいうお味噌汁のような感覚。

オランダ、イギリスによって世界に広まった「カレー」という言葉

“インド副総督の侍医としてインドに渡り、以来30年余り各地を旅行しながら植物、薬学、香料などについての研究に取り組んだポルトガル人ガルシア・ダ・オルタが、1563年に『インド薬草・薬物対話集』という本を出版しました。この本の中で、カレーについて、「鳥の肉か獣肉で、彼等はカリール(caril)と呼ばれる料理を作る。」と記述しています。これが、ヨーロッパの文献に登場する最初のカレーと言われてます。”(出典:ハウス食品株式会社公式サイト カレーの世界史 )

インドの主要言語のタミル語には食事を意味するカリ (கறி、kari) という言葉があり、イギリスに伝わり英語で「curry カリー、カレー」と総称されるようになったという説もあります。

インド生まれの「カレー」はイギリスから発展!?

本格的にヨーロッパで広がり始めたのは18世紀に入ってから、イギリスは植民地のインドからスパイスやインド米を持ち込みカレーの調理法を紹介していきます。

カレーは多種類のスパイスを組み合わせて作るために、そうした調理経験の少ない外国人にはカレーは難かしいものでした。しかし19世紀にイギリスではカレー粉が作られ容易にカレーが調理できるようになり世界各地に広まりました。当時イギリスに冷蔵庫はまだ無く肉類が腐敗しやすく、スパイスを用いたカレーは肉の臭みが消せる調理法としても人気でした。日本には明治時代にイギリスからカレーが伝わり、昭和に入って日本のカレーは独自の発展を遂げていきます。

チキンティッカマサラ
チキンティッカマサラはイギリス発祥のインド料理、今では世界中で食べられます。(写真はインドレストランBOMBAY OLIVE[mfn]https://bombayoliverestaurant.com/[/mfn] のChicken Tikka Masala チキンティッカマサラ )

イギリスにはインドからの移民も多く伝統的なカレーが昔から食べられています。さらに地元の人たちによってアレンジされた「カレー」をレストランや食堂で気軽に楽しめます。「チキンティッカマサラ」はイギリス発祥のインド料理、今では世界各地でポピュラーなカレーとして知られています。焼いた鶏肉のパサパサした食感をイギリス人は好まず、それをトマトとクリームのカレーソースで煮込んだものが始まりといわれています。

インドカレーの重要食材 玉ねぎ、トマトの伝来

インドカレーのベースにも使われる玉ねぎとトマト。玉ねぎは中央アジアを原産としているために昔からインドでも食卓に上がっていた食材と考えられます。

1492年コロンブスにより新大陸発見されスペイン人がトマトを持ち帰り、まずヨーロッパで広がります。その後16世紀にトマトはインドに到着しました。インドの気候はトマト栽培に適しているため、18世紀までに広く採用されます。この時点で今食べられている「インドカレー」の原型はすでに出来上がったのだと思います。

まとめ

インドでの生活についてよく聞かれる質問に、「毎日カレーばかりで飽きませんか?」という質問があります。日本の方から見ると確かに毎日カレーです。でもインドの方からすればそれらは別々の料理であって、ひとくくりにされるものではありません。「カレー」自体イギリスから発信された言葉であって、インド人にとっては「カレー」は外来語になります。カレー粉もイギリスで開発され世界に普及していきました。

次回はインドカレーと日本カレーの違い、最近世界から注目されている新作インドカレーなども紹介したいと思います。

※12月19日、タイトルを一部変更しました。

※このコラムは画像を含め社外コラムニストから提供されたものであり、「Webマガジン ニュース・オブ・アジア」編集部および合同会社アジア・パブリック・インフォメーションが内容の正確性・最新性を保証するものではありません。ただし、画像・文章の一部は編集部にて取得、あるいは加工、修正してある場合があります。また、コラム内で表現されている考えは当社の考えを代表しているものではありません。コラムニストの信頼性もしくは誠実さは十分に確認されておりますが、情報の利用は当サイトご利用者様ご自身の責任でお願いいたします。

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