皆さん、こんにちは。HBK.Iです。
前回は、かつてネパールではカフェの存在が観光地に限定されていたことや、ネパールにもカフェ・カルディがあったことをお伝えしました。今回は、カフェの発展のレベルを知るのに役立つ情報をレポートいたします。そこから、ネパールのコーヒー事情が見えてきます。
ネパールのファストフード店
紅茶文化のネパールでも急速に愛飲家を増やすコーヒー。商業界が、売れる物を放っておくはずがありません。それは、国がどこであっても変わりません。
日本でもコーヒーはあらゆるジャンルの外食産業に浸透しています。数十年前であればセットと言えばコーラが定番だったハンバーガーでも、コーヒーの存在感が圧倒的になっています。マックカフェはついに、専門のコーヒーカウンターを用意した「マックカフェ バイ バリスタ」にまで発展しつつあります。お寿司のお供には日本茶がおいしい伝統ですが、回転ずしチェーンでもコーヒーに力を入れるようになっています。カレーのCoCo壱でも、紙パックのコーヒーが売られています。もはや、コーヒーのない飲食店は生き残りが難しいとまで言える状況です。コンビニでも、堂々とカフェを名乗るコーナーができているほどですね。
程度は日本ほどではありませんが、同じようなことがネパールでも起こっています。分かりやすくお伝えするため、まずは、ネパールのファストフード店について説明する必要があります。
日本でファストフードの代表と言えば、やはり何と言っても、ハンバーガー、そしてフライドチキンでしょう。いずれにしても、入店して注文後、すぐに食事できるのことが最大の特徴です。ファストフードというその名のとおりですね。

ネパールにもファストフード店を名乗るお店はあります。しかし、その実態は日本のファミリーレストランと呼ばれる営業形態のお店に近いものです。
店に入ります。
席に座ります。
メニュー表を見て、注文を取りに来たウェイターに注文を伝えます。
それから、厨房で調理が始まります。
そう、注文後に、調理開始です。時間帯にもよりますが、すでに用意ができているものと言えば、モモくらいでしょうか。これは、ネパール風餃子と呼ばれることが多いですが、シュウマイや小籠包に近いイメージですね。蒸して作ります。
実は、常に食事(ダルバート)が準備できている食堂の方が提供が早かったりするのですが、このような、“ファストフード”店が所々に営業しています。
メニューはだいたいのお店で均一であり、チャーハン(フライドライス)、焼きそば(チョウミン)、春巻き(スプリングロール)、あんかけ堅焼きそば(チョプシィ)、ミルクティ(チヤ)などです。これらを、注文後に調理します。塩気や辛味が強いものが多く、従来はコーヒーとはあまり結びつかないであろうメニューが並びます。

最近、そんなネパールのファストフード店に変化が生じています。新しく営業を開始するお店が、Cafeを名乗ることが多くなったのです。そして、コーヒーを提供するようになりました。もっとも、以前の本コラムで紹介したとおり、ネパールではコーヒーと言えばエスプレッソのことです。ドリップコーヒーはありません。
狂気のコーヒー!?
昨年夏に訪れた首都カトマンズのとあるファストフード店は、とりわけコーヒーに力を入れているように見うけられました。とはいえ、コーヒー専門店であるカフェとしてのそれではなく、まだまだファストフード店としての、それです。それでも、コーヒーメニューが充実しているように思えます。気になり、メニューに目を通します。
Flavoured Capaccino…, Cafe Mocha…, Caramel Macchiato…,
眺めてゆくと、あるメニュー名に目が留まります。
… Mocha Maddness。
ん?なんだこれは?
日本では聞いたことのない名前のアレンジ・コーヒーです。しかも、マッドネスって…。直訳すると、狂気のコーヒー…???他のコーヒーメニューには説明文が載っているのに、これには説明文がない…。それに、dがひとつ多いような…。これは興味が掻き立てられます。ウェイターを読んで聞いてみます。
私:「この、Mocha Maddnessってどんなコーヒー?」
ウェイター:「モカ・マッドネスです…」
私:「…って、どうやって作ってるの?」
ウェイター:「聞いてきますね!」
ネパールでは、ウェイターが何も知らないというのは、普通のことです。
彼は意気揚々と戻ってきました。そして、次のような説明をしてくれました。
「これは、キャラメルソースに、エスプレッソとミルクを入れて、その上に、すべてのソースをかけてあります!」
すべてのソース!すごいではありませんか。それは、狂気のコーヒーと名乗るのにふさわしそうです。とても甘そうではありますが、挑戦してみないわけにはいきません。早速注文して到着を待ちました。

これが、モカ・マッドネス。
気になる味は…。
ん?なんか薄い…。
「狂気」感は全くありません。
スプーンをカップの底まで入れてキャラメルソースを探しますが、ありません。それに、すべてのソースと言っても、キャラメルソースとチョコレートソースの2種類しか乗っていないようです。
説明と違う。これもネパールのお店ではよくあることです。
後で、店長に誰がコーヒーを淹れたのか聞いてみたところ、店長が自分で淹れたとのことでした。どこで修業したのか質問してみたところ、独学だ、とのお答えをいただきました。
なるほど、どうりで。
妙に納得のいく説明を受けた気分になってしまうから不思議なものです。これが、ネパールの“カフェ”の現在地なのでしょう。
でも、しっかりとした本格派カフェも増えつつあります。
次回は、ファストフード店ではない本格派カフェの現在地を示すエピソードをお伝えしたいと思います。
それでは皆様、素敵なCoffee Breakを。
HBK.Iでした。
※この記事は、「Webマガジン ニュース・オブ・アジア」編集長が個人資格で投稿しているものであり、当サイトおよび運営会社の考えを代表しているものではありません。編集長個人が過去に他サイトに掲載したものを当サイト用に一部編集して掲載しました。